第5章 開会式
ローズとオリーヴが部屋を出て行って数十分後、ダンデとはたわいの無い話をしていると、ダンデは壁にかけてある時計を見て立ち上がった。
「そろそろ俺もいかなければならない。君と少し話ができてよかった」
ダンデの申し訳なさげに下げられた眉が、もうここを去らねければいけないのだと分かった。もこのあとはホテルに戻り、明日からはジム巡りに旅に出発する。
「まだ仕事が残ってるんですか?」
がそう尋ねると、ダンデは特に嫌気がさしているといったことはなく、いつも通りの笑顔で「あぁ」と、だけ言った。
時計の時刻はすでに3時を超え、どんな仕事が残っているかはわからないが、残業にならないことを祈った。
「入り口まで送ろう。しばらくは君とも会えそうにないからな」
「ん”ん"っ・・・あ、ありがとうございます(会えそうにないって!会えそうにないって!!!)」
ダンデの紳士ぶりに心臓がドギマギしつつ、はダンデの後に続いて部屋を出た。
・・・
帰りはちゃんと地図を確認しつつ、関係者のみが入れるドアの出入り口まできた。ドアが見えてきた頃、はふとある事に気が付き、歩いていた足を止めた。
突然止まったを不思議に思ったダンデも足を止め、彼女の顔を伺った。
「何か忘れ物でもしたか?」
「え、いや・・・ダンデさんは・・・(この後ちゃんと目的地につけるか心配になってきた。ローズさんも多分こんな気持ちなのかな・・・でも聞いたらそれはそれでここまで送ってくれたダンデさんに申し訳ないって言うか)」
言うべきか、言わないべきか、答えあぐねていると、ダンデはそんな様子のを見て察したのか、腰につけてあったモンスターボールをを手に取り宙に投げた。
中から出てきたのは尾に炎を宿し、オレンジ色の大きな龍のようなポケモン、リザードンだった。
「大丈夫だ、俺にはリザードンがいるからな」
「バギュ!」
リザードンもすぐに理解したのか、俺に任せろと言わんばかりに鳴いた。
は出てきたリザードンに目をキラキラさせて、手を伸ばして近づいた。