第5章 開会式
箱の中に鎮座していたのは、真新しい白色のスマートフォンだった。
は上箱をサッと元の箱の状態に戻し、テーブルの上に置き直した。
「気に入ってもらえたかな?」
「いやいやいや、なんですかこれ」
「携帯だよ。だって君持ってないってダンデ君から聞いてね」
(ダンデエエエエエエ!!!!)
は隣に座っているダンデを恨めしく見ると、ダンデはいつも通りの笑顔で首を傾げてくるだけだった。
(なんでこんな時そんなに鈍いの?!え?もしかしてわざと?ローズさんと結託して・・・いや、ありえる)
「ええと、私」
「君、今日みたいに連絡が取れずにどうやって君にアポを取ればいいんだい?君も子供じゃないならわかるよね?」
「・・・はい」
「と言っても、僕から呼び出すことは滅多にないと思うけどね。もう一つは選手の君の安否確認もあるから、そう邪険に思わないでほしい」
ローズはに宥める様に、子供に言い聞かせる様に言った。
もそう言われると、断り辛いと思い、眉間にますますシワを寄せるだけにとどめた。
そんなの様子を見て、ローズは苦笑いした。
「何かあればいつでも連絡してください。すでにわたくしの連絡先が入ってますが、出るのはオリーヴ君だと思うので」
「・・・はい」
返事はするが、明らかに不服だと顔で訴えている。
ローズはの横に座っているダンデをチラリと見ると、ダンデの目線の先はに向いている。
彼女を見る目は優しく、いつまでも見つめていたいと思わせるほど、穏やかな顔をしていた。
(ダンデ君、その感情を知れば、君はどうなっちゃうんだろうね)
全く隠されていないダンデの気持ちに、ローズも若いっていいなと思った。
チャンピオンになったダンデと、ずっと一緒にいたが、今までこんなダンデを見るのは初めてで、ローズは微笑ましく二人を見た。
(叶うといいけど・・・まだまだ時間がかかりそうですね)
(さっきからローズさんなんかずっと微笑んでて怖い・・・)
はますますローズが苦手になったのだった。