第5章 開会式
(もしかしてこの人・・・友達いないの?)
それを聞くにはあまりにも地雷を踏みかねないので、はあえてその言葉を喉奥深くに仕舞い込んだ。
(でもダンデって子供の頃からチャンピオンで、ずっとこの世界にいるから友達作る暇もなかったのかも・・・そういえば家に帰る暇もないくらい忙しい人だった)
そう思うと、は少しダンデが可哀想に思えた。
しかしダンデはキャンピオンの座を望んで君臨し続けている。バトルをするのが好きなのも、勝つのが好きなのも知っている。
「・・・いいですよ、行きましょう!」
「本当か!」
が了承すると、ダンデはこっちにも楽しみだと伝わってくるくらい、本当に嬉しそうに笑っていた。
「でも条件があります」
「え」
「ダンデさん、私と友達になってください」
「とも、だち・・・俺と?」
「そうです」
「・・・フフ」
「え!なんかおかしいですか?!」
ダンデが急に笑い出し、は間違ったことを言ったのだろうかとヒヤヒヤした。
「いや、笑ってごめん。チャンピオンになってからそう言われるのは初めてでなんか新鮮だと思って」
なんとか笑うのを押さえ込んだダンデは、こちらを見ているを見つめた。
「ありがとう、」
「違いますよ、ダンデさん。友達ならこうですよ」
は自分の右手をダンデの前に出した。
出された手をダンデはパチパチと瞬きを数回したのち、すぐに意味がわかって自分の右手をその手に重ねた。
「よろしく、ダンデさん」
「こちらこそよろしく、」
ヘラりとは笑った。
ダンデは自分の手と握手しているの手を、愛おしそうにみた。
(どうして彼女はこうも俺をワクワクさせてくれるんだろう・・・俺は、こんな感じだったか?)
何かが違うとダンデは思いつつ、重なった手の温度が混じる心地よさに目を細めた。