第5章 開会式
【キバナ視点】
二人が角を曲がってすぐ俺は片手で顔を押さえ、大きなため息を吐きながらその場に蹲み込んだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ」
「大丈夫かい、キバナ君?!すごい汗かいてるけど!」
「あーーー大丈夫っす。ちょっと疲れただけだ」
「・・・さっきのダンデ君、少しいつもと違ったね。本当に急いでたから怒ってたのかな?」
「・・・かもな」
そうだったらまだ良かったと俺は思った。
でもダンデが俺を見る目はそうじゃないって俺にはわかった。
わざと煽る様に話せば、俺を見る目は本当にゾッとするほど冷たく感じさせた。
またと何かあったか、あの時逃げられたままなのかはわからないが、はダンデを苦手に思っているのはわかった。
お前はもう少しうまく立ち振る舞えないのかって、俺は言いたくなった。
でもわかったことは一つある。
俺はカブさんがいることを分かりつつも、ニヤける口を抑えることができなかった。
(あのダンデが嫉妬!しかもあんなに分かりやすくてすっげぇ睨んできた!!)
睨まれた時、普段見ないダンデの様に正直俺は少しビビった。
バトルで散々ぶつかり合って、睨み合ってきたはずなのに、今さっきのは純粋な嫉妬だった。
俺が散々ぶつけてきたものが、まさか自分に帰ってくる日が来るなんて。
「フッ・・・ハハ、ハハハハハハハ!!!」
「キバナ君?!」
「すまねぇカブさん!俺さま今スッゲー気分がいいんだ!」
「え?そうなの?」
「おう!これからジムに戻って鍛えてくる。今年こそダンデに勝つからな!」
ニヤける口が収まらなくて、俺は手で覆い隠した。
「それにしても君たち、いつの間にいたずらなんて思いついたんだ?」
「・・・え(カブさんもしかして気がついてないのか?)」
「僕年甲斐にもなくハラハラしちゃったよ」
「マジか」
あれに気が付いてないカブさんにもビックリだが、俺は通路を曲がって消えたが不憫だと思った。
(も気が付いてねぇ様だが、ありゃ無意識だな。会いたくなさそうだったから乗ってやったのに、とんでもないもの見つけちまったな・・・さて、どこまで逃げれるかな)
きっと今も逃げたいと思っているあいつと、逃す気もないダンデ。
(ん?そういえばあいつダンデに着いてったよな・・・)