第1章 出会い
「それにしても、姉ちゃん強えな!」
「へっ?」
被害女性の多大な感謝にそろそろ逃げようかなと思っていた頃、周りで見ていた町の人たちが集まってきた。
「すごーい!ハッサムってこの地方にいないから、海外のトレーナーさんだよね!ガラルには何をしに?」
「腕試しか?ガラルは強えぞ!」
「い、いやいやいや、ただの観光で」
「観光ならやっぱりキョダイマックスを観にですよね!」
「それもありますけど…」
すっかり人の輪の中心にいるは、矢継ぎ早に飛んでくる質問にどうしようと困り果てた。隣にいるハッサムも、周りには大人気のようで、特に小さな男の子や若い女の子に群がられて、こちらも困り果てているようだった。
(引ったくり捕まえただけだったんだけど、なんかすごいことになっちゃったなぁ)
あはは、とその場を苦笑いでごまかそうとゆっくり後ろに下がった。
「おーい!悪いけど、ジュンサーさん連れてきたから道を開けてくれよなー」
人が大勢周りにいるのに、その声がよく耳に響いて、ザワザワしていた周囲が一瞬静かになる。
(あれ、この声って・・・)
自分の後ろから聞こえた声に振り返りたいが、人が多すぎて後ろが向けない。でも周りの人のざわつきが帰ってきて、誰かが言った。
「キバナだ!」
「キバナ様のお通りだー。俺さまの街で悪いことする引ったくりヤローはどこだ?」
「キャー///キバナ様!!ここに縛り付けてありますわ!!!」
「おう、サンキューな!」
キバナはニカっと笑った。
その瞬間周りからの黄色い声が上がって、は心臓の動悸が激しくなるのがわかった。
(キバナ様が…後ろにいる!?ででででででででもこんなに早く会えるなんて思ってなかったし、ああああああ死ぬの?私今日ここで目の前が真っ白になっちゃうのおおおおお!?)
そんな様子のに周りは気が付かず、ただハッサムだけが呆れたように見ていた。
さっきまで出来た人の輪も、今はキバナの方に行ってしまったようだ。
(わ、私もキバナ様見たい!でも心の準備がああああああ!!!)
ドキドキたかなる鼓動を押さえながら、はゆっくりと後ろを振り返った。そこには、憧れの……。
「君のハッサム、すごく強いな!」