第1章 出会い
勢いよく飛び出したハッサムは、腕をクロスにしてそのままフォクスライにつっこんでいった。フォクスライはその勢いについていけず、低姿勢で迫ってくるハッサムにビビり、ハッサムのシザークロスが首より下あたりにヒットした。
「キュウっ!?」
フォクスライは飛ばされた後、地面にゴロゴロと転がった。
「フォクスライ?!クソ、何しやがるこのおん・・・っ!」
ガチャン!と、男の顔の横に、大きなハサミが閉じる音がして、サッと体の体温が下がるのがわかった。
ゆっくりと横目で見ると、大きな目玉の模様をした、ハッサムのハサミがそこにはあり、男は腰を抜かした。
「ヒィイイイイ!!!な、なんで、こいつがこ、っここに!?フォクスライ!おい、フォクスライ!聞こえてんのか!??」
「大人しくして!あなたのフォクスライはもう戦闘不能です!」
「な、なにぃ!?」
男が首だけを後ろに向けると、確かにフォックスライはピクリとも動かず地面に伸びていた。
「フォックスライは悪タイプのポケモン。虫タイプの技には弱いので、私のハッサムでワンターンキルさせてもらいました」
「わ、ワンタン…?このクソアマが…ヒィィっ!」
ガチャン、ガチャンとハッサムはまたハサミを男の耳元で鳴らした。
「私のハッサムは賢いので口には気をつけてくださいね」
ニコッと効果音が付きそうなは笑った。男はその笑顔を見てゲッソリとした顔になった。
・・・・・
その後は男から引ったくられたであろう鞄を、元の持ち主に返した。
男は街の人たちが持ってきた縄で、街の街頭に括り付けられていた。男の狙いはポケモンではなく、鞄の中にあった書類だったらしいが…。
「ありがとうございます!大事なポケモンがこの中に入ってたんです!!」
被害者の女性は涙ぐみながらに何度も何度もお礼を言った。
「いえ、大したことじゃ…大事なポケモンが無事で良かったです」
「ええ!もう会えなくなるかもしれないって思うと、怖くて…」
「…そうですね、私もこの子たちが居なくなるなんて考えられません」
はふとイッシュ地方のとある少年を思い出した。あの少年は自分の求める真実を見つけることができたのだろうか…。
遠い空を見上げながら、そう思った。