第1章 出会い
「はぁ…買ってしまった///」
両手にはめられた先ほどの手袋をは何回も見てはため息をこぼした。両手も暖かければ心も暖かい。
はブティックのすぐ横にあるカフェでテイクアウトのコーヒーを注文して、外の席でひと段落していた。
(キバナ様…///)
わかっていた。自分がキバナに重症なことを。寄り道はしたが、ほぼ十年思い続けてきた男がこの街にいると思うと、は天にも登るような気持ちだった。
(会えなくても、キバナ様の出る試合のチケットは抑えたい。グッズもあったら全部押さえて実家に送ろう)
そんなゆっくりとした時間を、一つの声が引き裂いた。
「引ったくりっ!!誰か!誰かあの人を捕まえてくださいっ!!!」
ザワザワしだした雰囲気を感じ取ったは、声がした方に椅子から体を勢いよく弾き出した。
その男はフォクスライを先頭にこちらに走り向かってきていた。
「どけどけぇ!!!テメェらには用はねぇんだよっ!!!!」
人が大勢いるわけではないが、午後のまったりした時間には合わない怒声が町中に響き、周りの人たちはびっくりして、慌てて自分の大事なポケモンを抱きしめていたり、男に押されてこけた人たちの悲鳴が聞こえる。
「へへ、今日は大収穫だぜ!よくやったフォクスライ!」
「ライ!」
男が気を良くしてニヤニヤと笑う。はベルトに装着してあるモンスターボールを手にとった。
(ポケモンを悪いことに使うなんて!)
が男の逃げ道の前に出たが、男は変わらず勢いをつけたままこちらに走り向かってきた。
「おいおいお嬢さん!怪我したくなきゃ退きな!!フォクスライ、辻斬りだ!」
フォクスライに技を使うように命令した男に、は自分のモンスターボールを見てうなずいた。
「お願い、力を貸して!」
カタカタとモンスターボールが動き出して、は男に向かって投げた。
フォクスライから繰り出された辻斬りがに届く前に、が投げたモンスターボールから出たポケモンがそれを勢いよく片手で弾いた。
勢いはそのまま止まらず、そのポケモンはフォクスライに向かって行った。
「ハッサム!そのままシザークロス!!」