第18章 それぞれの道
どう答えるべきか、は悩んだ。メガシンカやキョダイマックスがない状態でレッドとダンデがバトルすればどうなるのか----見てみたいが、見たくもないような気持ちになった。にとっては特別だ。初めて触れたポケモンというゲームの主人公であり、何回、何十回以上もゲームの攻略をしてきた。最強にして原点、ずっと神のような存在に近いに、誰かに負けてしまう姿など見たくなかった。できるなら、その神のような、崇めている存在をバトルで倒してみたい。認められたい。
難しい顔をして悩んでいたせいか、ダンデはの頭に手を置いた。
「そんなに悩むか?」
「そりゃ悩みますよ!レッドは私の憧れなんですよ!そんな簡単に負けてほしくないというか、見たくないと言うか----私がレッドに最初に勝ちたいって思ってるんです。レッドを倒すのはグリーンじゃなくて私って決めてるんです!」
「…君は、キバナみたいなことを言うんだな」
「え!?」
思ったよりも熱く語ってしまったことと、キバナのことを言われてはハッとダンデを見上げた。
「私が、キバナ様みたい…?」
すると、の目は途端にキラキラと輝き出し、ダンデはしまったと思った。キバナのことは話すんじゃなかったと後悔したが、レッドという人物を倒すのは自分だと豪語しているは、自分のライバルにどこか似ているように見えた。しかし、が好きだと自覚したダンデにとって、他の異性にむける眼差しや想いが、自分を酷く醜い嫉妬を湧き上がらせた。
レッドの存在もそうだが、キバナもにとって大きく割合を占めているのは確かで、自分はどれくらい思われているのだろうかと嫌でも考えてしまう。
(好きだって言えば、君は少しでも俺のことを考えてくれるのだろうか…)
どうしたものかと、ダンデは頭を抱えたくなった。どう考えてもムードも何もない今、告白をしてもを困惑させ、フラれてしまう未来が見えた気がした。そうこうしている間に、二回目のフェリーの汽笛の音が鳴った。出発の合図だ。
「行っちゃう…」
少しずつ、ゆっくりとバウタウンを離れていくフェリーを、は複雑な気持ちで見つめていた。
(さよなら、インゴさん、エメットさん…)