第17章 始まりの一歩
でも、仮面を着ければ着ける程、私の思うバトルとは遠くなった。
楽しくなくなった。
わからなくなった。
負けたら自分には何の価値も失くなると思うと、怖くてたまらなかった。
--今みんなは、どんな目で私を見ているんだろう…。
「」
静かな仮眠室に、ダンデの声がよく聞こえた。何を言われるのだろうと、は体が強張った。ダンデは椅子から立ち上がり、ベッドの上で体を強張らせているに近付いた。
「君の本意じゃなかったとはいえ、もう一人の君も君の力だ。君の優しいところも、容赦のないところも、全部合わせて俺にぶつかってきてほしい。乗り越えて、俺を倒しに来い!」
「!」
「俺はいつでも受けて立つぜ」
力強い声だった。は恐る恐る顔だけを横にずらした。すると、手が見えた。----見覚えがあった。大きくて、暖かそうで、でもは知っていた。その手が自分を力強く引っ張ってくれることを。
(まただ…また、甘えそうになる…また、迷惑かけちゃう……でも)
また引っ張ってもらいたい、助けてほしい、立ち上がる勇気を分けてもらいたい、ガッカリされたくない----の中で、色々な感情が入り混じる中、強張って体にくっついていた手が、ゆっくり、震えながら、ダンデの差し出された手を取ろうとしていた。
(怖い…怖い、怖い、怖い)
ダンデの手はすぐそこにあるというのに、やっぱり受け入れてもらえないかもしれないと思うと、恐怖が心を支配した。決断できずに、時間がかなり立っているのではと、体感でそう感じていた。
それでも、ダンデの手はそこからいなくなることはなかった。
根気強く、を待っていてくれていた。
そして、ちょん、と指先だけが触れ合った。ビックリしての手は少し離れたが、存在を確かめるようにまた指先だけが触れ合った。ゆっくり、ゆっくりとダンデの指先を滑るように、の手が重なっていく。
それまで大人しく見守っていたダンデは、自分から手を動かして、ギュッとの手を優しく、でも離れないように握り込んだ。
(…あったかい)
怖いと思っていた気持ちが、嘘のように吹き飛んでいった。