第17章 始まりの一歩
(オレ様たち、何見せられてんだ…)
目の前で傷付いた野生のポケモンが、やっとトレーナーに心を通わせたような、そんな場面に立ち会っている----と、キバナは思った。
(いやいやいや、前回みたいに窓から飛び降りて逃げるより遥かにイイ方向じゃねぇか。実際どう声かけていいかわからなかった訳だしな…さすがダンデだぜ)
慰めるわけでもなく、乗り越えて倒しに来いと言い切ったダンデの言葉は本物だろう。さらに強くなるであろうと、ただバトルがしたい----嘘偽りはない。
キバナは、ダンデとの繋がっている手を見た。数ヶ月前にの手を握ってしまい、逃げられたと苦笑いしていたダンデが、今目の前で繋がれているのだ。
正確には、ダンデが掴んでいるようなものなのだが、最初に手を取ったのはだ。ダンデの手だから取ったのだ、とキバナは何故かそう思った。
(よくわかんねぇけど、知らない内にコイツら仲良くなってたんだな……)
----オレ様の手なら取ったか?いや、の手をオレ様は取れるのか…?
「悪い、少し外すぜ」
キバナは静かに席を立った。カブにダンデを見張るように言われたが、様子を見る限り大丈夫そうだと判断した。ヤローとルリナを残して、キバナは部屋を出た。
パタン、とドアが完全に閉まると、キバナは向かうの壁に背をつけた。
「今何考えた、キバナ」
顔に手を当てて、自問自答するも、答えはもうわかりきっていた。
「----キバナ」
誰かに声をかけるまで、キバナはそこから動かなかった。キバナに声をかけたのは、後処理をしていたネズだった。
「浮かない顔ですが、どうかされましたか?」
「…いや、何でもないぜ」
いつもの笑みを浮かべるキバナに、ネズは眉を少しだけ寄せた。
「…そうですか」
踏み込んだらいけないような、踏み込んでほしくないような、なんともいえないキバナの笑みに、ネズは目を逸らした。
「…なら、目を覚ましたぜ。ちょっとばかし落ち込んでたけど、ダンデが何とかしてくれそうだ」
「…それでいいんですか?」
「ん?」
「…いや、何でもないです」
これ以上面倒ごとはごめんだ、とネズは小さなため息を漏らした。