第17章 始まりの一歩
【ヒロイン視点】
「…本当?」
「嘘じゃないぜ」
「…こんな、『わたし』、でも…?」
「ああ、だから自分を否定するのはやめてくれ」
「……ハハッ」
私は渇いた笑い声を漏らした。
「何それ……なんで、今…言うかなぁ…」
ダンデさん、酷いよ。もう消えちゃうのに。ズルいよ。そんなこと言われたら、消えたくなくなっちゃうじゃん。私だって----こんなの、あんまりだ。
「…ムカつくから、これは私がもらってくから…」
「何を言って…」
私を受け止めてくれて、否定しないでくれて、好きだって言ってくれて----。
右腕はダンデさんに抱きしめられて、完全に動けないから、私は左目を押さえていた手を顔から離して、ダンデさんの首元のシャツを掴んで、力一杯、私の最後の力を振り絞って引っ張った。
「ッ!」
完全に油断していたダンデさんは簡単に引っ張られて、顔が近くなった。驚いて目が大きく開いてて、口が少し空いてて、ちょっと可愛い。
それでもまだ少し遠いから、私は背伸びした。
「…フフッ!そんな顔も、できるんだ♡」
赤くなったダンデさんの顔が面白くて、やってよかったって思った。
最後くらい、欲張ったっていいじゃないか。
これからどうなるか、見れないのが悔しいなぁ。
せいぜい苦労してよね、ダンデさん。
「ありがとう、ダンデさん…」
また、いつか--------。