第17章 始まりの一歩
消えてしまう。そう言ったからは一切の悲しみも感じないほど、穏やかな声色だった。
「…消えるって言っても、私は強制的に引き出された感情みたいなものだから…ちょっと違うんですけど……だからそう思い詰めないで、ください…」
「…認められたい人が、いたんじゃないのか?」
「----いますよ…でも、ダンデさんに、勝てないんじゃ…」
「…?」
腕の中にいるの体が、段々と重みを増した。体に力が入っていないという方が正しいのか、の意識はフワフワと雲の中を漂うような、眠気がやってきた。
「わたしは、いない方がいいんです----わたし、も、受け入れて…くれない…こんな、デキソコナイ…」
「そんなこと言うなッ!」
「……何で、そんなに怒って、るんですか?」
は面白いものを見たと、クスクスと笑い声を漏らした。
「…でも、こんな最後も…悪く、ない…の、かも…」
「…」
「あーぁ……もっと早く……ダンデさんに……会いたかったなぁ」
「…」
ダンデはの顔を覗き込むと、片方は仮面、もう片方は手で覆い隠していて、全く表情が読めなかった。口だけが彼女の表情を表していて、笑っているのに、弱々しい声のせいか、悲しそうに見えた。
は死ぬわけじゃない----そうだとわかっているのに、暗示で強制的に引き出されている感情だと、頭ではわかったいる----わかっているのに、ダンデの心は痛みが広がるばかり。
いっそ消えたくないと泣いてくれたら、どれだけ楽か----こうなってしまう前に、助けていれば----そんな考えがよぎっては過ぎて、抱きしめる腕に力が入ってしまう。
「わたし…想像してたんです……わたしがバトルに負けた時…そのトレーナーは、きっと大喜びするはずだって…ずっと思ってたのに……ダンデさん、」
「なんで…そんな泣きそうな顔、してるですか?」と、は苦しそうな顔をしているダンデに尋ねた。
「なんで喜ぶんだ……俺は、どんな君でも好きだ」
「……ぇ?」
フワフワしていた思考が、一瞬夢から覚めたように覚醒した。