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【剣盾】君を待つ

第17章 始まりの一歩



 夜空が段々と明るくなり始め、夜明けが近いことがわかる。

 ラグラージ、そしてメガリザードが地に伏せ、は薄く笑った。


「…あーあ、私の負け、か…」


 は二匹をボールに戻し、後ろにいたゲンガーとメタグロスに振り返った。


「ゲンガー、守ってくれてありがとう。メタグロス、みんなを下ろしてあげて…麻痺してるのに…そんな律儀な所も、大好きだよ」

 磔にされていたみんなが地面に降りたことを確認したは、更に二匹をボールに戻した。


「」

 後ろから声をかけられると、は緩やかに振り向いた。ダンデはすでに自分のポケモンたちをボールに戻して、のもとへやってきた。


「ダブルも強いなんて、ズルい人」

「君も十分強かった…それに、万全じゃなかっただろう」

「…そんなこともわかっちゃったんですかぁ…」


 「ズルいなぁ」と、困ったようにはにかんで、フラついている体に鞭を打ってダンデに向かって歩いていく。

「わっ…」

 覚束ない足取りで歩いたせいで、何もないところで足を引っ掛け、の体は前のめりに倒れていく。でも、痛みはまたやってこない。前の前にいたダンデが、しっかりとを抱きとめてくれていた。


「大丈夫か?」

「うん…」

「…?」


 は抱き止められたダンデの腕の中で、弱々しく、それでも穏やかな笑みを浮かべていた。


「ダンデ!!」


 そこへ、キバナ達ジムリーダーが駆け寄ってきた。みんな心配そうな面持ちで二人を見ていた。


「ダンデさん…一つだけ、お願い、いい?」

「ああ」

「…ギュッてして」


 ダンデは抱き留めていた腕を解き、改めてをすっぽり覆うように腕の中に閉じ込めた。押し付けられるようにある胸板からは、心臓の音が心地よく聞こえてくる。


「…ラストバトルがダンデさんでよかった…」

「何を言って…」

「私は一回でも負けると消えるように暗示されてるから…きっともうすぐ…それだったら、私は…私を倒してくれた人の腕の中で消えたい」


 他の誰でもない、ダンデの腕の中で。
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