第16章 月と太陽
「一体何が……ん?」
ネズは怪訝そうにエメットを見ると、の影が光を受けている場所になく、後ろにいたエメットの影とかぶさっていたことに気が付いた。
「影…の影がおかしいです…」
「影?」
ネズの発言で、みんなの視線は陰に集まった。ダンデやポケモンたちの影は、本体の真下にあるはずが、の影はまるでエメットの影を捕まえるように後ろへ伸びている。
「…アララ、通りで後ろが隙だらけだと思ったのニ…ちゃん酷いよ」
その影から、赤い目が二つ浮き上がり、三日月のようにニヤリと笑った白い歯も浮き出してきた。の影からのっそりと出てきたポケモンは、エメットを止めているサイコキネシスで、後ろへ大きく吹き飛ばした。
「ゲーン」
影から現れたのは、のゲンガーだった。一体いつからそこにいたのか、それとも忍ばせていたのか----インゴは眉を顰めた。
「隙のない女ダ」
きっと自分のために用意されていたであろう罠に、インゴはがどんな手を使ってでも仮面を取らせないようにしていたのだと気が付いた。
「ごめんなさい、ダンデさん----再開しましょう♡」
「…ああ」
何事もなかったかのように、はポケモンに指示を出した。
「イテテテテ…もう、酷いナァ」
エメットは飛ばされて打ちつけた背中を摩りながら、上体を起こした。
「ゲンゲロゲーン!」
ゲンガーが目の前に立ちはだかり、「俺が相手だ」と言わんばかりだ。
「本当厄介なもの作っちゃっテ……本っ当、どいつもこいつも…ムカつくんだケド」
今まで浮かべてた笑みは消え失せ、エメットの額にはいくつかの血管が浮き上がっていた。穏やかそうな雰囲気もなくなり、まるで双子のインゴのように見える。
「…キレましたネ、アイツ」
「冷静に分析してる場合かよ!」
「キレた弟はワタクシよりタチが悪いんデス…」
でも今はその方が都合がいいかもしれないと、インゴは細く笑んだ。
「泣いても許してあげないカラ…その仮面ひっぺがして××××して××××させて××××しまくってヤル…」
エメットはデンチュラを手持ちに戻すと、アーケオスを代わりにゲンガーの前に出した。