第16章 月と太陽
(変だ、すっごく変な感じ…でも、嫌じゃない)
不思議な感覚はの足を動かし、ダンデの元へ向かっていく。の行動を静かに見ていたジムリーダーたちは、何をする気だとダンデに心配の目を向ける。
自分の元へ向かってくるを、ダンデは警戒も何もしなかった。から悪意がないことは見ていてわかったし、むしろ近付いてきてくれることに嬉しく感じていた。
あと一歩、というところでは歩みを止め、ダンデを不思議そうに見上げた。まるで初めて出会った人間を見るような、そんな視線だ。
「仮面を取りなさイッ!!!」
しかし、その静寂は一瞬にしてインゴの叫びで破られた。は咄嗟に仮面の端を両手でおさえ、取られまいとダンデから慌てて距離をとった。
「おまっ…いきなり叫ぶなよ!」
隣にいたキバナがインゴに怒鳴った。
「チッ…せっかくのチャンスヲ----あの仮面さえ取ってしまえば、正気を取り戻してここから出られたでしょうニ」
「はぁ?!何言ってんだ、お前」
「…見物ですヨ、仮面をとった後の彼女の泣き叫ぶ顔と言ったラ----」
「黙ってくれないか!」
と、突然ダンデが声を上げた。場はシン、と静まり、視線がダンデへと向く。
そこで初めて、ダンデが怒りの目でインゴを見ていることに気が付いた。
「ダンデさん…」
「…お前がそこにいるといことは、大方に負けたんだろう。なら、静かにしててくれ」
インゴも、そして誰もが口を閉じた。
それは、裏を返せば敗者は黙っていろという風にも聞こえた。こうも不愉快だと顔で示すダンデを見たことがなく、周りは息が詰まりそうだと思った。
しかし、ただ一人嬉しそうにダンデを見ている人物がいた。
は笑みを深め、モンスターボールを手に持ち、ダンデに向けて掲げた。
「やっぱり、ダンデさん最高です♡もちろん、バトルしてくれるんですよね?」
早く始めようと、ワクワクを隠しきれないに、ダンデも少年のような笑みを向けた。
「ああ、受けて立つ!」
廃人のが 勝負を仕掛けてきた▽