第16章 月と太陽
「----どうやって、暗示を解いたのですカ」
今まで静かにしていたインゴが、急に口を開いた。
それに気が付いたは、フフフと笑いながら、インゴの問いに答えた。
「私はあなたの暗示は解いてはいませんよ」
「…!なら、何故ワタクシに反抗しタ?」
「えー♡?それはもう言ったじゃないですか。もっと強いトレーナーとバトルがしたいって。インゴさん弱すぎてつまらないんですもん♡」
「っ…」
「もともと縛り付けられるのは好きじゃないんです。だからチャンピオンなんて座も私には必要ない----自由になること、私も、もう一人の私も、ずっと望んでいたことですよ♡」
「理解できました?」と、はインゴに問いかける。
インゴは顔を歪めたが、頭は妙に冴えていた。
「…あの時ですネ、やけに素直に仮面をつけたと思ったラ」
「んふふ♡もうバレちゃったみたいですね!」
インゴとの会話についていけないジムリーダーたちは、困惑しつつも話を静かに会話を聞いていた。しかし、キバナとネズはエメットの話を聞いていたおかげか、少し考えて、二人が何を話しているのか理解できた。
(こうなることを予測して、自分自身に暗示をかけていたということ…)
(つまり、今アイツを縛り付けるものは何もない…ただ強いトレーナーを探して戦い続けるだけになったということか?それなら自分で暗示を解くか、もっと他の暗示をかけたほうが----)
何か引っかかると、キバナは眉間に皺を寄せて悩んだ。
(もっと他に理由があったのか?)
全く身動きができない体に、キバナは歯痒さを感じた。
そこへ、何かが羽ばたく音が少しずつ、だんだん大きく聞こえてくる。はパッとその音が聞こえる方へ体の向きを変えると、嬉しそうに両手を頬に当てた。
「やっと来てくれた♡」
まるで鼻歌を歌い出しそうな、ワクワクした様子を隠しもしないが、ただ一点を見つめて笑みを深めた。
「お待ちしてました、ダンデさん♡」
リザードンが地面に降り立つと、ようやくダンデがその姿を表した。