第15章 真夜中の開幕劇
【インゴ視点】
には仮面をつけるト、シャンデラの催眠術で暗示をかけてあル。より完璧なポケモントレーナーになってもらうべク、暗示は一つだけではなイ。
最強でありつづけヨ。
バトルのことだけを考えヨ。
恐怖や迷いという感情はなイ。
負けることは絶対に許されなイ。
そしテ、笑顔を絶やさないこト。
この暗示がかかっている間、はワタクシを怖がるような目で見ることはなイ。気を遣うような言動モ、素振りもなイ。ただバトルに飢えた人間となリ、その他の感情が欠落しようとモ、傍にいてくれさえすればよかっタ。
仮面を外した直後、全ての感情が戻ってくるのカ、は泣いて懇願するその姿ガ----。
『もう、嫌、です…ヒック…やめて、ください……インゴさん、お願い…もう、やだよ…バトル、したくない…!』
初めてそれを見た時、とても説明ができないような気持ちガ、ワタクシの中で沸き上がったのヲ、今でも鮮明に覚えていル。
いつもワタクシをバトルで負かしている女ガ、嫌だと泣いて縋るその姿のなんと心地良いことカ。仮面を付ける時モ、泣いて逃げ惑う姿に何度興奮したことでしょウ----。
『いやぁ!付けないで!!!バトルなんかしたくないッ!!もう誰も傷付けたくないの!!!ノボリさん助け----』
バチン、と乾いた音が部屋に響く。
『その名前は呼ぶなと言ったはずですガ』
『…いッ!!』
『呼んでも来ないことくらイ、お前もわかっているでしょウ…全く手間がかかる小娘ですネ』
そう言ってやるト、漏れそうになる声を必死に抑えるように口を閉じテ、ますます目から溢れる涙が溢れ落ちる姿ノ、何と愉快なことカ。もう逃げられないと理解しているはずなのニ、それでも抗うことをやめなイ。
『なんで…何で私なんですか?私、最強なんて…そんなの、なれないです』
お前はそう言いますガ、実際仮面をつけたお前は一切隙のない完璧なバトルをするトレーナーになれル----なれるはずなのニ…。
『…なら、どうしてワタクシはお前に勝てないのですカ』
どんな戦略を立てようト、お前はいつも楽しそうにワタクシの更なる上へ行ってしまウ……お前と出会ってからワタクシの心ハ、乾いテ、乾いテ、飢えるばかリ。