第15章 真夜中の開幕劇
「ゲン!」
「駄目だ!」と、ゲンガーはの服を掴んで揺さぶった。
「ゲーンガ!ゲン、ゲーン!!!」
必死に引き止めようとするゲンガーの姿を、はぼんやりと見下ろした。
「ゲンガー…」
お互い静かに見つめ合った後、はゲンガーをモンスターボールの中に戻した。そして手の中にある仮面を無表情で見下ろし、目を閉じた。
(自由に…なるんだ…)
仮面を顔に近付けると、「」と、インゴに名前を呼ばれた。は手を止め、インゴを見ると、いつもの不機嫌そうな顔をしているはずなのに、何か迷いを感じている目をしていた。
「…城ではあれほどワタクシを拒絶していたというのニ、やけにあっさりとその仮面を着けるのですネ」
「…どうせまた痛い目に遭うくらいなら、素直に従った方がいいと思っただけです…」
訝しげにを観察するインゴは、自身の顎に手を当て、妙に落ち着き払っているの肩に手を乗せた。ビクッとは大きく震え、よく見ると手も震えていた。
「----バカは嫌いじゃないデス。お前がしっかり反省しているようでワタクシ、安心しましたヨ」
「…」
肩から手が離れると、は今度こそ仮面をつけた。
(なりたい…自由に……誰にも縛られることなく…)
仮面を着けると、の手はダラリと仮面から離れて下がった。クスクスと笑い声が聞こえ始め、インゴはやっと肩の力を抜いた。
「どうですカ、久々のソレは?」
「…フフ、どうってインゴさん、それはよぉくお分かりじゃないですか!」
項垂れていた顔をパッと揚げたは、ご機嫌でインゴを見上げた。
「やっと出てこられた!もうインゴさん、見つけるのが遅いんじゃないんですか?」
「これでも苦労したして見つけたんですヨ…少しは労ってもらいたいものですネ」
「はいはい、お疲れ様でーす♡」
「…はぁ」
これはこれで疲れると、インゴはため息をついた。