第15章 真夜中の開幕劇
コツ、コツと、靴音を鳴らして建物の影から出てきたのはインゴだった。は立ち止まると、ハッと顔を上げて、絶望の目でインゴを見つめた。
「い、インゴさん!?」
薄ら笑いを浮かべたインゴは、ゆっくりとに近付いた。もインゴが近づいた分だけ後ろに下がった。
「ゲン!!」
その代わり、ゲンガーがインゴの前に立ちはだかり、怖い顔でインゴを睨みつけた。まるで、それ以上近付けば容赦はしないと、威嚇していた。
それをみたインゴは立ち止まったが、まるで怖がる様子は一切なかった。
「お前もわかっているはずです。ここにいる奴らも、本気のお前とバトルを望んでいたしょウ?」
「っ…!」
「あのチャンピオンにもお前は完全な本気は見せなかっタ。なのにお前は全部を出し切ったような顔をして……不愉快極まりないデス」
「わ、わたし…ちゃんと本気出して----」
「お前が本気だったなら、メタグロスはああも簡単にやられはしなかったでしょウ」
「!!」
「その心の弱さをどうにかしろと、ワタクシは再三指摘してあげたと言うのニ----弱いお前など、必要ないのデス」
「ッ…」
「お前モ、世間がそれを望んでいることをご存知のはずデス」
『みんなそうだろ、全力のコイツと戦いたいって思っているのは、俺さまだけじゃねぇ!!』
「ち、違っ……」
『お前の舐めプが原因だと俺は思いますけどね』
「わた、し、は…」
インゴに言われたことが、チャンピオンカップ前夜のパーティのことを思い出し、の心臓はバクバクと大きく鼓動した。
「誰も弱いお前を必要としていかったでしょウ」
「…」
「その様子でハ、図星のようですネ----お可哀想ニ」
ちっとも可哀想などと思ってもいないインゴは、緩やかに口角をあげると、コートのポケットに手を入れて、中で掴んだものをの目の前に出した。見覚えのある目元しか隠せない+と−が描かれた仮面だった。
「帰りましょウ、。ワタクシといればお前は強いままでいられル…何より、お前が一番わかっているはずデス」
「…」
はゲンガーを避けてインゴの元へ向かった。向けられている仮面を手に取ると、その仮面をジッと見つめた。