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【剣盾】君を待つ

第15章 真夜中の開幕劇


 バウタウンになんとかたどり着くと、メガシンカをしていたリザードンは元の姿に戻ると、地面に荒い息を吐きながら横たわった。

「リザードンっ!!!」

 だいぶ長距離を飛んだせいで、かなり疲労していた。私はリザードンの顔を持ち上げて、優しく抱きしめると、弱々しい声で鳴いたリザードンにまた涙がパタパタと溢れ出てきた。

「っ…いつも無茶させてごめんね…」

 モンスターボールにリザードンを戻すと、ルリナのモデル事務所まで素足で走って向かった。小石が時々足の裏に刺さって痛かった…でも、ここまで無理して飛んでくれたリザードンを思うと、こんな痛みなんか、我慢できた。

 バウタウンはもう深夜の夜に包まれていて、街には人はかなりまばらだ。街灯の明かりがあちこちあるおかげで、道に迷うこともない。でもドレスを着て、素足で道を走っている私を見かけた数人の人は、きっとおかしいと思っただろう。


 なんとか事務所に着くと、誰もいなくて真っ暗だった。事務所の脇道に入り、上から繋がっているパイプを見つけて、なんとか二階までよじ登る。二階の窓に手が届いて、中を覗き込むと、ゲンガーとエレズンが仲良くソファーに座って眠っていた。

 バンバンバン!と、窓を叩くと、それに飛び起きたゲンガーがびっくりして私の方を見た。

「ゲンガー!!開けて!!」

「ゲン?!」

 きっとこんなところから主人が現れるなんて、予想もつかなかっただろう。慌てて窓に寄ってきたゲンガーは窓の鍵を開けると、窓を大きく開いた。ゲンガーの助けを借りて部屋に入ると、迷いなく自分の荷物に手をかけた。

「エレ…?」

 慌ただしくなった部屋に、寝ぼけ目のままのエレズンが、ぼんやりしていた。慌ててドレスを脱ぎ捨て、頭についていた装飾も、耳飾りも何もかも取り外して、今朝来ていた服に着替えていく。

「うっ…!」


 着替え終わると、突然吐き気を感じて、部屋に置かれていたゴミ箱を慌てて掴み取って、お腹に酷く気持ち悪く感じるものを吐き出した。


(ヤバいヤバいヤバいヤバい!)


 脳裏にインゴに襲われたこと、ダンデとキバナがぶつかって地面に転げ落ちるところがガンガン頭に響くように脳裏によぎった。


「うぇ……ハー…ハー…っ」

 思い出すだけで、何回でも吐ける。そんな気がした。



 そしてこんな弱い自分が、大嫌いだ。
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