第14章 悪夢は醒めない
飛び出していったダンデとキバナがいなくなった部屋には、ネズとエメットだけ。エメットは可笑しそうにネズに尋ねた。
「あれ?君は行かなくてよかったのカナ?」
「あいにく飛行タイプは持ってないんです----それに、誰か一人はお前を見張っておかないといけないと、俺が勝手に判断しました」
そう言ったネズは、用心深くエメットを見据えた。
「どうしテ?ボクはちゃんを助けに来たんだヨ?ボクの話を聞いてたよネ?」
「…聞いていたと言うより、聞かされてたというべきじゃないですか?ベラベラとどうでもいい事を話しをして、アイツの知られたくない過去を俺たちにバラして不安にさせた。ああなることをわかって、俺たちに話した…違いますか?」
「…フゥン、思ったより鋭いネ」
「に自分だけが理解者だと示して、自分の手を取らせる…お前の兄もクソですが、お前もそう変わらないクソ野郎ですよ」
「フフ、フフフ!なーんだ、バレちゃったカ!」
エメットは悪びれる様子もなく、むしろ楽しげな声を上げて喜んでいる子供の様だった。
「だってちゃん可愛いんだもん。インゴに泣かされてるのに強がっちゃってサ!最高だったヨ、あの子がゆっくり壊れていく所!」
「…チッ」
「フフッ、でもインゴの元から逃したのはボク。これは事実ダヨ!」
「…でもアイツはお前のところにも行かなかったみたいですね」
「ほーんと、困った子だよネ!誰にも見つからないように、大事にしてあげようと思ってたのにサァ……うまく行かないもんだネ」
自虐的な笑みを浮かべているエメットは、両手を上げて降参のポーズを取った。その時、ネズのスマホから音が鳴り、ネズはそれをとった。
「もしも----」
「ネズか!悪りぃ、アイツを…取り逃した…」
電話の相手はキバナからだった。
「今どこですか?」
「大通りの…端ぐらい、に…い……ってぇ」
「一体何があったんですか?」
電話から聞こえるキバナの声は、いつもの覇気はなく、荒い息が聞こえた。
「ハァ…っクソ、俺もダンデも油断してた…メガシンカをうまく使われた…」
「俺たちもそこへ向かいます。現在地を送ってください」
「あぁ…」
ネズは電話を切ると、ニヤニヤと笑っているエメットを見て、大きなため息を吐いた。