第14章 悪夢は醒めない
(早い!これじゃあ振り切られる!)
ダンデは少しずつではあるが、とそのリザードンとの距離が空いていくのが分かった。市街地や障害物をスルスルと、まるで水の中を自由に泳ぐような動きで、視界から消えそうなたちに、ダンデは焦りを覚えた。
リザードンも、目の前の標的が自分から遠ざかって行くことがわかっていた。自分よりも小柄であり、力は自分が勝っているが、すばやさでは向こうが上だと直感で分かった。更に小回りも、立ち回りも上手く、ダンデが焦る気持ちにリンクするように、リザードンも焦り出した。
このままでは振り切られると思った時、大通りにあるいくつもの通りから、とリザードンに向かって何かが横から飛び出して来たのが見えた。
「キバナ!!」
飛び出して来たのはキバナとフライゴンで、がハッと気がついた時には、キバナの長い手が自分に伸ばされていた。
「逃がすかよっ!」
逃げるのに必死で、キバナのことまで考える余裕もなかった。スローモンションの様に、自分に伸ばされる手が見えて、は泣き出しそうな顔でキバナとフライゴンを見た。
「ごめんなさい…」
がそう呟くと、のリザードンが眩しい光に包まれた。
「おいおいおいおいッ!マジかっっ!!!」
カッと、一瞬だけ強い光が、キバナとフライゴンの目を閉じさせた。
「ギュアアアアアア!!!」
恐竜のような咆哮がナックルシティに響き、オレンジだった鮮やかな色は、くすんだ灰色の肌へ、尻尾の先で輝いていた暖かい炎は冷たい青い炎へ。あふれる力に任せるように、のリザードンは尾を地面に叩きつけることで真上へ飛び上がった。
「避けろキバナっ!!!」
ダンデの声が聞こえたが、強い光で目が眩んでいるキバナとフライゴンはまだ目を開けられず、真っ直ぐ突っ込んで飛んでいたダンデとリザードンと正面からぶつかることとなった。
あまりの勢いに、フライゴンは吹き飛び、キバナは振り落とされた。ダンデもリザードンから振り落とされ、地面に転がり込んだ。
は上空からその様子を見て、ハッと息を呑んだ----が、痛む心を押さえつけて、リザードンに飛ぶ方向を指さした。
「行こう…」
罪悪感でいっぱいの心が、痛い。