第14章 悪夢は醒めない
「待ってくれ!!」
ビュウビュウと風が早く耳を過ぎる音、まだ冬でもないのに薄手のドレスはの体を容赦なく冷やしていく。人肌より暖かいリザードンにしがみついていなければ、今頃手が悴んで、落ちていたに違いない。
後ろを振り返ると、ダンデとそのリザードンがを追いかけてやって来た。さらにその後ろには、フライゴンに乗ったキバナの姿も捉えることができた。
自分を追ってきたダンデとキバナに、はヒュッと息を呑んだ。
「リザードン…!」
「グルルルルル」
のリザードンも、気配に気付いたのか、後ろをチラリと一度伺うと、力強く羽ばたいて、二匹から距離を取ろうとした。
「おいダンデ!どうすんだ!!」
「追いついて捕まえるしかない!」
「お前はそのまま追え!俺さまがなんとか不意をついてやる!」
「ああ、頼んだ!」
キバナとフライゴンは、ダンデとリザードンとは別の方向へ素早く飛んでいった。ダンデは目標を失わないように、しっかりとを見つめた。
逃したくない、そんな強い思いがダンデの心を占めていた。
のリザードンは古城の上空を飛ぶのを止めると、ナックルシティの市街地ギリギリ上を飛行した。時々ある煙突や障害物を軽くいなす様に、しなやかに避けて飛ぶ姿は、まさに優雅であった。
ダンデのリザードンも負けてなるものかと、のリザードンの後に必死に食らいついていく。自分に食らいつくように飛んでくるダンデのリザードンに、のリザードンは鼻を鳴らして更に狭い通路に入り込んだ。
まるで迷路の様な道を右へ、左へ、そして大通りに出てビュンビュン飛び回る二頭のリザードンに、市街地にいた人々は驚きと困惑した様子でいた。事情を知らない人々からすれば、何があったか分からないが、今ガラル地方でリザードンを持っているのは二人のトレーナーしかいない。
チャンピオンダンデと、準優勝しただ。
「レースでもしてるのかしら?」
「スッゲェ!めっちゃ早ぇあのリザードン!!」
しかし、当人たちはそんな声は一切聞こえない。一人は逃げること、もう一人は追いつき、捕まえることで必死だったからだ。