第14章 悪夢は醒めない
全く反応がなくなったに、ダンデやキバナは焦りを感じた。
「埒が明かないので、こじ開けましょう」
「おい、何言って…」
ネズが大きなため息をついて椅子から立ち上がり、持っていたモンスターボールからタチフサグマを出した。キバナを無視し、ドアの前にいたダンデの肩を掴んだ。
「少々強引ですが、致し方ないです」
「でも彼女に何かあったら…」
「相手が静かにしている時は、何か悪いことがあると思った方がいい」
冷静に、しかし焦っているようにも見えるネズは、ダンデをドアの前からどかした。そして手持ちのタチフサグマに頷いて見せると、タチフサグマは躊躇なく、自前の鋭い爪でドアを切り裂いた。
「歴史的建造物なんだが、今回は仕方ねぇな!」
無惨な姿になった木製のドアに、キバナは諦めながらも、ネズの言っていることは正しいと思って、目を瞑ることにした。
大きな穴が空いたドアに、ダンデは臆さず中に入った。そして部屋の奥、唯一窓があるところに、空いた窓の枠に体を乗せたが、驚いた顔をしていた。
「ッ!!!」
すぐにダンデは理解した。理解するよりも、体が先に動いて、に手を伸ばして駆け寄った。ダンデの後に続いたキバナも目をこれでもかと大きく開いて、今にも外へ飛び出しそうなを見ていた。
「っ!」
ダンデがあまりにも素早く駆け寄ってくるので、は冷たい風が入り込んでくる外に躊躇なく飛び込んだ。一瞬で視界から消えてしまったに、ダンデはゾッと心が冷えた。慌ててがいた窓枠に手をかけて下を見ると、の相棒のリザードンが彼女を背中にうまく乗せ、飛んでいく姿が見えた。
「まずい!リザードンに乗って逃げられた!」
「まじかよアイツ…飛び降りとか…」
ダンデも慌てて自分のボールに手をかけると、それを空へ投げた。同じオレンジ色の体、そしてのリザードンより少し大きな体のリザードンは、何事だとダンデを見ていた。
「リザードン!を追ってくれ!」
「バギュア!」
遠ざかっていく小さな赤い炎を目にしたダンデのリザードンは、力強くうなづいて、ダンデが乗れるように背を向けた。