第14章 悪夢は醒めない
「ボクより、先にちゃんをどうにかしたほうがいいと思うヨ」
うすら笑みを浮かべるエメットに薄気味悪さを感じながらも、彼の言う事は正しかった。色々なことが分からず、混乱しそうになる頭をダンデは無理やりに切り替えた。
「、俺は…君を初めて見た時、バトルがしたいと思った。君が、並のトレーナーじゃないって、俺の勘がそう思った----推薦状を渡したのはローズ委員長だが、本当は俺が…俺がローズ委員長に渡してほしいって言ったんだ……俺は君よりも欲張りだ。ローズ委員長なら、君をどうやってでも参加させるようにしてくれるってわかっていたから」
(純粋そうな顔してるくせに中々エグいんだよなぁ、コイツ…)
巻き込まれた形のキバナは、ジトっとダンデの背中を睨んだ。ネズも顔を少し険しくした。
「俺が君を危険に晒したんだ。碌に君の事情も聞かず、俺の欲を満たすために……ごめん」
・・・・・
ドア越しから聞こえるダンデの謝罪に、は口を閉ざした。決してダンデがしたことで引いたとかではなく、むしろ謝罪の言葉を言わせてしまって申し訳なかった。
どんな事情があれ、最終的にダンデとのバトルを望んだのは自分であり、人生で最高のバトルができたことに、幸福を感じた。
それでも、過去は消えない。あの姿を見られては、もう顔を合わせることだって恐怖にしか感じない。見られたくなかった。知られたくなかった。チャンピオンという輝く存在のダンデが、廃人落ちした自分が余計に汚らしく思えた。
は大きな窓ガラスに手をかけた。窓を開けると、月はだいぶ動いてはいたものの、まだその光は強く、古城のあちこちを明るく照らしていた。
ポシェットからモンスターボールを取り出すと、夜空に向けてスイッチを押した。明るいオレンジの肌、長い尻尾には暖かくて力強い炎を灯したリザードンが出てきた。
地面ではなく、空に出されたリザードンは慌てるでもなく、背中についた大きな翼をはためかせた。暗い、なんとも言えないの顔を見たリザードンは、何も言わず、主人が何故自分を呼び出したか、理解した。