第14章 悪夢は醒めない
一歩、また一歩とゆっくりに近付いていくエメット。
「ボクが、ずっとちゃんといてあげル。インゴから守ってあげるカラ、ボクと一緒に帰ろ、ネ?」
エメットは聞き分けの悪い子供に言い聞かせるように、優しい声でに言葉を投げかけた----ブン、とエメットの顔の真横を、黒い何かが横切った。
その横切ったものは、ガン、と壁に当たると、重力に逆らうことなく、床に落ちた。
「----?」
エメットはが投げつけたであろうものを振り返ると、自身のスマホが床に無惨に落ちているのを見つけた。その隙をついて、は自身が寝ていた寝室に駆け込み、内側から鍵をかけた。
「!!」
「おい、どうなってんだ!あいつめっちゃ怒ってたじゃねぇか!!」
ダンデが寝室のドアを叩き、キバナは方然としているエメットに怒鳴った。
「!ここを開けてくれ!動画のことなら何も気にしてない!!」
「ダンデさんが気にしなくてもっ!私は気するよっ!!」
ドアの向こうから、の悲痛な叫びが聞こえた。ダンデはドアを叩くのをやめて、強引にでもドアの向こうに行こうとする体を落ち着けさせた。
「やっぱり…やっぱりバトルなんかしなかったらよかった……私が欲張ったから…バチがあったんだ……私、馬鹿みたい…」
「君のせいじゃない---自分を責めるようなことはしないでくれ…」
静かに、落ち着かせるように、ダンデは慎重に言葉を選んでに問いかけた。それが余計にに心をキリキリと締め付け、痛くなった。自分にはそんな優しくされるような価値はないと、涙がまた出てきた。
「無駄ダヨ……ちゃんは出てこない」
呆然としていたエメットだったが、ダンデとのやりとりはしっかり聞いていたようだ。まるで知っているような口振りに、ダンデはエメットを睨み付けた。
「彼女に何をした…」
「何モ。少なくともボクは何もしてないヨ……ちゃんを傷付けたのは、インゴだけじゃないからネ」
どういうことだ、とダンデとキバナはエメットを見た。ネズはまだ席についており、成り行きを静かに見定めていた。