第14章 悪夢は醒めない
ボーッとする意識が、ゆっくりと覚醒していくと、見覚えのない天井がまず見えた。体を起こして周りを見ても、全く知らない部屋のベッドに寝かされていた私は、怖くなって、最後に見た暖かい太陽の瞳を思い出した。
「だん…で、さん…?」
声は掠れて、さらに小さかった。誰も現れる気配はなかった。体を起こすと、靴を脱がされている以外、ドレスは綺麗に直っていた。ベッドのサイドテーブルに置かれていた私物のポシェットを見つけて、私はそれを手に取って中を開けた。
小さくなったモンスターボールが一つと、スマートフォン、新しくかった口紅と、ハンカチが一枚。何も取られていないことにホッとしつつ、私はドアの向こうから聞こえる声に向かって歩き出した。
ドアに耳を当てて、会話の内容を聞こうとするも、少し遠くにいるのか、くぐもっていて聞こえずらかった。怖かったけど、ドアノブに手をかけて、ゆっくり音がならないように、慎重に回した。
ドアに隙間があいて、そこからこっそり外の様子を見ると、背中を向けてはいたけど、キバナ様、ダンデさん、ネズさんがいた。向かいで誰かが話しているらしいけど、ダンデさんが壁になっていて、誰か分からなかった。
『あーぁ、また弱いチャレンジャーだった!インゴさーーーん!!いつになったら強いチャレンジャーとバトルできるんですかぁ?どうせタバコ吸ってるんでしょう?!』
「!!?」
突然よく知った声が部屋中に響いた。
『インゴさん、バトルしましょう♡どうせまた待たないといけないんですし、さっきのチャレンジャーより、インゴさんの方がまだ保ちますよね?』
やめて、違うの、それ、私じゃないから…。
『わーい♡何分持つかな♡』
やめて、やめてやめて!聞かないで!見ないで!そんなの私じゃないから!!
「----なんだよ、これ…」
プツン、と何かが頭の中で切れたような音がした。もう止められなかった。見せたくなかった。知られたくなかった。私じゃない私の大嫌いな、わたし。
私は部屋から飛び出して、忌々しい音が鳴っているケータイに手を伸ばして掴み上げた。
ああ、もうここにはいられないや。