第14章 悪夢は醒めない
【視点】
ポケモンバトルが楽しいと思えるようになったのはいつだったっけ?
最初はすごく下手くそで、レッドやグリーンに何回バトルを挑んでも、負けてばかりだった。痛そうな攻撃がポケモンに当たると、私は怖くなって、それ以上続けていいのかわからなくなることが多かった。
負けっぱなしで辛かったけど、旅は楽しかった。どんな時もポケモンたちと励まされて、一緒にご飯を食べて、一緒に寝て、楽しいこともいっぱいあった。ゲームでは簡単だと思っていたポケモンバトルも、リアルになると全然違うことが、こんなにも難しいなんて、旅を出る前は思いもしなかった。
『お前、バトル弱いのになんで旅なんか続けるんだよ?おまけに捕まえるのも下手っぴで、図鑑も全然埋まってねぇじゃねぇか』
『ば、バトルだけが旅の目的じゃないもん!捕まえるのだって…あとでお世話できなくなったら可哀想だから…』
『じゃあお前の旅の目的ってのは、何なんだよ?』
『私の…旅の、目的…』
当時のグリーンは、調子に乗ってて、辛いこともよく言われた。それが正論だから、言い返せないことが多かった。私だってこんなことになるなんて、思ってもなかった。ゲームじゃ負けたことなんてなかった。いっつもコテンパンにしてたのは、私だったのに…。
勝ちたい、だけど勝てない。私だって好きで負けてるわけじゃない。無闇に捕まえないのは、好きなポケモンだけ揃えたいから。誰にも負けない、強いトレーナーになりたい。こんな臆病な私なんか、私なんか----。
『は、弱くない。誰よりも、優しいから』
滅多に喋らないレッドが、私に言ってくれた。
『の、一番いいところ』
レッドが羨ましかった。バトルも強くて、捕獲も上手で、ポケモンも大事に、愛情いっぱいに育てていた。
『…優しいだけじゃ、勝てないよ』
その時の私は捻くれていて、可愛げもなかったに違いない。優しいという言葉が、私に突き刺さって、大嫌いな言葉だった。私がもう少し、心が強かったらって、何回も思って、でもどうしたらいいかわからなくて。
『は強くなる。成長しているのは、ポケモンたちだけじゃない----優しいことは、悪いことじゃない』
そう言って私の頭を撫でるレッドの手は優しくて、あったかくて、大好きで、憧れた。