第14章 悪夢は醒めない
「前に『チャンピオンになる気はないノ?』って聞いたんダ。そしたらちゃんなんて言ったと思ウ?『窮屈そうだからなりたくない』だってサ」
「ちゃんらしいよネ」と、エメットはやれやれと呆れた様子だったが、気にしてもいない様子だった。
「----お前の兄は、をチャンピオンにしたかった…そういうことですか?」
と、ネズが呟いた。インゴはその質問に、首を緩く横に振った。
「チャンピオンなんて、正直ボクたちにとってどうでもいいことなんダ…あ、気に障ったらごめんネ!ボクたちの職場、バトルサブウェイに肩書きなんて必要ないんダ。必要なのは強さと精神----正直、並のチャンピオンと戦うより大変なんだヨ」
インゴはまたスマホをスライドしていくと、ある動画で指が止まった。
「インゴは----もっと見たくなっちゃったんダ、その先ヲ---そして気がついタ---ちゃんの無意識の狂気ニ」
エメットはスマホの画面を三人に向けた。
そこには電車の中と思われる場所で、赤のラインがところどこにある黒色の駅員の制服、目深く被った黒色の駅員の帽子に、+と−の目を隠すような仮面をつけた、誰か。
口元はうっすらと微笑んでいるような、不気味な様子だった。
動画は社内の防犯カメラからの撮影で、反対側には利用者と思われる人が乗っていた。
黒い制服の駅員がシビルドンを繰り出すと、三人はそのシビルドンがのだとすぐに気が付いた。
そのバトルの様子は圧倒的で、利用者が泣いて車両を降りて行った。
『あーぁ、また弱いチャレンジャーだった!インゴさーーーん!!いつになったら強いチャレンジャーとバトルできるんですかぁ?どうせタバコ吸ってるんでしょう?!』
が自分の背にしていたドアに向かって叫ぶと、そこからと同じ色のコートと帽子を被ったインゴが出てきた。
『チッ…うるさいんですヨ、お前ハ』
『インゴさん、バトルしましょう♡どうせまた待たないといけないんですし、さっきのチャレンジャーより、インゴさんの方がまだ保ちますよね?』
『…そのムカつく口を黙らせてやりますヨ』
『わーい♡何分持つかな♡』
「----なんだよ、これ…」
信じられないと、キバナはエメットを強く睨みつけた。