第14章 悪夢は醒めない
ネズにはダンデの横顔しか見えなかったが、名残惜しそうに立ち上がったのを静かに見ていた。寝室から出た二人は、机を挟んで座っているキバナとエメットの空いている椅子に腰掛けた。
「さてさて、どこから話すべきなのカナ」
どこか楽しそうな様子のエメットとは反対に、三人は真剣な顔でエメットを見ていた。
「君の娯楽話しに付き合う気はない。を襲った君の双子の兄のことを話してほしい…どうしてにあんなことをした?」
「!」
ピリピリした空気を醸し出したダンデに、エメットは一瞬驚いた表情を見せた。隣に座っていたキバナは表情を崩さなかったが、内心見たことのないダンデの姿に冷や汗をかいていた。
(ダンデのやつ、キレてるな…それに目も座ってやがる)
バトルの時とはまた違った、静かな怒りが籠った目をしていた。
「----さすが、チャンピオンをしてるだけはあるネ。他の二人とは纏う雰囲気が全然違うヤ」
しかしエメットは臆している様子は一切なかった。
「君のような強いトレーナーと出会うと、ボク本当に嬉しいんダ…ちゃんが羨ましいナァ…あ、今度バトルトレインに挑戦しない?君も気にいるはず----」
バン!と、ダンデは机に手を叩きつけて立ち上がった。
「話す気がないなら、帰ってくれないか…」
「ダンデ…」
落ち着けよと、キバナもネズも言いかけたが、机についた手にかなり力が込められていて、怒りを必死に抑えている様子が窺えた。ニコニコとしていたエメットは、今にも襲いかかってきそうなダンデを見上げていたが、上がっていた口角が下へ下がった。
その顔はバルコニーで出会った男そっくりで、エメラルドの瞳がダンデを睨みつけた。
「誰のせいでちゃんが見つかったと思ってるノ?」
それまで明るい雰囲気を纏っていたエメットから、一瞬にして別人のように雰囲気が凍りついた。
(雰囲気が…変わった)
自分を睨み上げているエメットに、ダンデは一切目を逸らさなかった。
「ボクがせっかく逃がしてあげたのに、君たちのせいダヨ。あんなに大々的に放送して、インゴの目に止まらないわけなイ」
「逃がした…?」
キバナが話に触れると、ダンデを睨んでいたエメットは、キバナの方を向いた。