第13章 囚われの心
「彼女に……何をした」
乱れたドレスに、真っ白の背中にはポツポツ目立つ赤い痕。聞かなくてもダンデは何が起こったのか予想もできたが、出てきた声は思ったよりも低かった。
だんだん険しくなっていくダンデの顔を、インゴは愉快そうに見ていた。
「何をって、躾、とでも言いましょうカ?自分の仕事も真っ当にこなせない役立たずなのでネ」
ビクリと、が大きく体を震わせた。
「その上逃げ出す始末----見つけたと思えばバトルの腕も落ちていると言うのに満足している様子…ハァ」
インゴは大きなため息をわざとつくと、はますます震えて、嗚咽が漏れた。
「----言いたいことはそれだけか?」
ダンデが口を開くと、ピリピリした威圧感をインゴは感じ取った。も背を見せているとはいえ、ダンデの雰囲気が変わったことを感じてギュッと目を閉じた。全てが怖くてたまらなかった。
と、その時、バルコニーに叩きつけられたシャンデラと、バルコニーに降り立ったリザードンが現れた。
「チッ…やはり押し負けますカ」
インゴがシャンデラに一瞬目を向けると、ダンデはインゴに向かって飛びかかった。上着を掴み上げ、振りかぶった拳をインゴの左頬に殴り付けた。ゴッと、鈍い音がした。は自分の後ろで何が起こっているかわからなかったが、全てが恐怖に思える今、先程の音に「ヒッ」と、悲鳴を漏らしてギュッと目を強く瞑った。
「ッッ…お前っ!」
ダンデはからインゴを遠ざけるように、自分のいた場所と変わるようにインゴを放り捨てた。殴られた頬は少し腫れ、唇を切ったのか、血がジワリと滲んでいた。
インゴはジロリとダンデを睨み付けると、ダンデも負けずとインゴを睨んでいた。
「汚い手で彼女に触れるな」
「…どうやら、お前のことを少し勘違いしていたようですネ…ただのお飾りチャンピオンかと思ってましたが…お前、今どういった顔をしているかわかってるんですカ?」
「…」
インゴはまた飛びかかってきそうなダンデを睨み付けると、舌打ちをしてシャンデラを呼び寄せた。