第13章 囚われの心
「紳士面した獣ガ……行きますよ」
インゴは忌々しくダンデを睨み付けたあと、シャンデラと共にバルコニーを飛び越え、月光の届かない闇に紛れて消えた。「待て!」と、ダンデは慌ててインゴが飛び越えたところから庭園を覗き込んだが、もう姿はなかった。
インゴとシャンデラの正体に考え込んでいると、小さな嗚咽と鼻を啜る音を拾った。ハッと、インゴからに意識を向けたダンデは、慌ててに駆け寄った。
「、……」
「大丈夫か?」なんて、聞かなくても、ドレスやセットした髪はグチャグチャ。首や肩につけられた痛々しい歯形、胸元でドレスをきつく握りしめて、俯いて泣いている姿を見て、ダンデは口を閉ざした。
ダンデは自分が羽織っていたマントをを取ると、の背中に優しくかけてやった。
「遅れてすまない…どこか痛いところは?」
慎重に、怖がらせないように、ダンデは優しくに声をかけたが、の様子は変わることがなかった。
「…俺のドラメシアが教えてくれたんだ、君が危ないって」
ピクっと、が小さな反応を示すと、俯いていた顔をゆっくり上げた。どれくらい泣いていたのか、目が少し腫れていた。それが余計にダンデの心を締め付ける。
「ど……どら、めしあは…だ、だいじょう、ぶ…ですか?」
「!…ああ、少し怪我をしているが、大丈夫だ」
「よ…よかったぁ」
また目に涙が溜まり始め、ダンデは自分よりポケモンの心配をしていたに頬を緩めた。
「君が無事でよかった」
「ダンデさん……(あれ?)」
微笑んでいるダンデを見た瞬間、は視界がぼやけ始めた。強い眠気を感じ、起きようと必死になればなるほど、意識は泥のように沈み始める。
(まだ、お礼も言ってないのに…)
上体をフラフラさせているを怪しく思ったダンデは、を注意深く見ていた。すると、突然の意識がなくなったのか、倒れる前に両肩を掴んだ。
「!どうした!?」
(起きなきゃ…目を開けなきゃ…)
パチンと、は意識を手放した。極度の恐怖と緊張がなくなり、は眠りについた。