第13章 囚われの心
ダンデはリザードンも出さずに廊下を歩いていた。リザードンを出すこと自体、考えがなったと言う方が正しいのかもしれない。と別れてから、ダンデは当てもなく、ぼんやりと、ただモヤモヤする心を無視していた。
何も考えずに歩いていたおかげだったのか、廊下の向かい側から歩いてくる声にダンデは顔を上げた。
「ダンデ君、お話しはできましたか?」
声をかけてきたのがローズだとわかると、ダンデは暗い顔をやめてパッと笑顔に戻った。
「はい、おかげさまで----彼女は、カントーに帰るそうです」
「そうですか」
「お時間いただけて感謝します、では俺は会場に戻ります」
ダンデはローズの横を通り過ぎ、会場へと戻るドアへと手をかけた時だった。
「本当に良かったんですか?」
ピタリと、ダンデは動きを止めた。ローズの意味がありそうな言葉に、ダンデは少し困ったようにローズに振り返った。
「委員長、何を言ってるんですか」
「いえ、貴方の顔が曇っているような気がしただけです…大丈夫ならいいんですが、我慢しすぎるのもよくないと思いましてね」
「何を言っているのか…」
「しっかり話せたのかと、聞いているのです」
はっきりと言ったローズに、ダンデは目を大きく開けてローズを見た。
「ダンデ君、貴方の話を君にされたのですか?」
ローズはダンデに向かって歩くと、ダンデの真横で止まった。
「君とバトルをしているときの貴方は、一際輝いているような気がしました----やっと出会えたのに、そう簡単に手放していいんでしょうか」
「…俺は…」
「私があげた時間を無駄にしないでください。目の前にあるチャンスを逃す程、貴方は甘いチャンピオンじゃないでしょう」
「----ローズ委員長、すいません。もう少しだけ時間をください!」
ダンデは握っていたドアノブから手を離して、走り出した。走り去っていくダンデの横顔は、話す前と違い、目に力が戻っていた。
「ダンデ君、君が来たのは反対側から…」
全く違う方向に走ってしまったダンデに、ローズの声は届かず、ローズは苦笑い気味に困ったなという顔をした。