第13章 囚われの心
インゴには手にとるようにの心情がわかっていた。
「噛まれると思って期待しましたカ?」
はイヤイヤと首を振った。
「フフッ…では、優しいのがいいんですカ?どうなんデス?」
ジクジク痛む首と肩につけられた歯形から、毒が染み込んでくるような、ジワジワとの心を追い込んでいった。そしてわかっていた、どちらを断っても噛まれるというとを。
悔しくて涙が止まらないのに、は頷いた。
「ああ、口を塞いでましたネ。ほら、どうして欲しいのか、その口で言ってごらんなさイ」
「っ…そ、んな…!」
口元を塞いでいた手が離れ、は涙が溢れ出した。せっかく恥を忍んで頷いたというのに、これ以上は心が耐えられないと、振り返ってインゴを見た。
「ヒック…ううっ、い、インゴ、さん…こんなの、ヒッ!」
インゴは肩口に歯を突き立てた。
「や、だ!噛まないでっ!痛いのやだぁ!!いやぁ!!!」
「ではどうして欲しいのか言えますよネ…ああ、お前にはこう言えばよかったですカ?----どうして欲しいのか、言ってくださいまし、様」
「ッ! やめてっ!!!」
避難の目でインゴを見ただが、インゴは面白いものを見るような目でを見つめ返した。
は力無く前に向き直ると、もう逃げ出せないことを悟った。そして、重たい口をゆっくりと開いた。
「---や…やさ、しく……して…」
悔しくて、涙がますます目から溢れ出した。
インゴは優しくを腕の中に閉じ込めると、うっとりとした表情での見た。
「お前の望みなら、仕方ないですネ…優しくしますヨ」
やっと手に入れたと、インゴは笑みを深めての首裏に、また一つ赤い花を咲かせた。