第13章 囚われの心
※微裏表現あり
「んんんっ!!!(離してっ!!!)」
必死に自分の手を引き離そうとしているを、インゴは愉快そうに見つめた。もがいても力の差が圧倒的で、抵抗すればする程弱っていくのがわかる。
「前はもう少し可愛げがありましたが…調教しがいがあってこれはこれでいいですがネ」
口元を押さえていた手を、無理やり上に向かせ、目と目がバッチリ合ってしまった。そして少し外側に顔を向けると、無防備な白い首筋が露わになった。
「誰が主人か、思い出させてあげますヨ…」
カプリと、インゴは露わになった首筋に優しく歯を立てた。はビクッと体を震わせると、抵抗していた動きを止めた。全身の神経が、噛まれているところに集中しているような感覚がして、ガタガタと体が震え出した。
(何、怖い、怖い、嫌だ、噛まれてる、怖い、なんで----)
震えを感じ取ったインゴは、噛んでいる力を徐々に強めた。
「んーっ!!!!」
噛まれているところがどんどん痛みを増していく度に、は首を振って暴れようともがこうとした。が、完全に顔を押さえつけられ、お腹にまわされた腕も比例して強く抱きしめられる。
(痛い、痛いよ、誰か…怖いよ…血が出ちゃう…)
あまりの鋭い痛みに、は目を瞑って耐え忍んだ。そうすることで、何も解決はしないのだけれど、もう目を閉じなければ耐えられそうになかった。
どれくらい噛まれていたのだろうか----時間の感覚もわからなくなった頃、インゴはようやくの首筋から口を離すと、痛々しい歯形と、月の光で怪しく唾液が光っていた。
ズルリと、腕の中にいるが脱力して、インゴは笑みを深めてを解放した。地面に座り込んだは、グズグズと泣き始め、手で顔を覆った。
「----もう、やだ…やめて、ください…っ」
震えて泣いて、もう抵抗することも諦めたに、インゴは心が満たされた。
『いや…インゴさん……もう、や、だ…もう許して…』
脳裏に浮かぶ、自分に赦しをこうの泣き腫らした赤い目----あの時と何も変わっていないがいて、インゴはの背後にしゃがみ込んだ。