第12章 踏み外したステップ
はハッと意識を取り戻すと、無意識に涙が出ていることに気が付いた。そして目の前で困った顔をしているダンデを見て、は慌てて指で涙を払った。
「ご、ごめんなさいダンデさん!これはダンデさんが思ってるような涙じゃなくてですね!!」
は慌てて弁明した。
「う、嬉し涙、です!!」
「そ、そうか…!」
「それならよかった…」と、ダンデはホッとした。の涙が止まっていたが、ダンデは胸ポケットに入れてあったハンカチを取り出した。
「使ってくれ」
「あ、ありがとう…ございます…」
素直に受け取り、は目尻にハンカチを押し当てた。
(うわああああまた情けないところダンデに見せちゃった!恥ずかしいよおおおお!!!!)
恥ずかしくて、逸らしていた視線をダンデに戻すと、バッチリと目が合ってしまった。優しく微笑んでいたダンデに、はますます恥ずかしくなってまた顔を逸らした。
「(み、見られてた…恥ずか死ぬ…///)ハンカチ、今度洗って返します」
「君が持っててくれ。俺より君の方が使ってくれそうだ」
「わ、私しょっちゅう泣いてなんかないですからね!たまたまですから!!」
よく泣いていると、ダンデに思われていそうな気がして、は弁明した。あまりこの話を続けていると、が拗ねそうな気がしたダンデは「わかった」と、言って話しを区切った。
(…なんだろう…言葉が出ないや…)
次に何を話せばいいのか、急にわからなくなった。ダンデをいつまでもここに引き止めておくわけにはいかないと、頭ではわかっているはずなのに、急にお別れを言うのが億劫に感じた。
「----」
そんな沈黙を破ってくれたのは、ダンデだった。優しい声色で呼ばれた自分の名前に、はダンデの方を見た。
「また、会おう」
手を差し出したダンデの手を、は迷うことなく自分の手を出した。
「はい、また」
優しく微笑んだダンデは、握手していた手を解いてバルコニーを出て行ってしまった。パタンと、閉まった扉を、ぼんやり眺めていた。