第12章 踏み外したステップ
(変なの…今からバトルしたいなんて思うなんて…あんなにしたくないって思ってたのに…思ってたのになぁ……)
は自分の足元を見た。自分の変化に驚きを隠せなかった。もう楽しいと感じることもないと思っていた灰色の心に、色が戻ってきたかのようだ。
ダンデとのバトルを思い出すたびに、もっとバトルがしたいと思ってしまう。怖い気持ちもあるのに、それ以上にその先を見てみたい。
(ダメだ、壊しちゃダメだ。ダンデを倒すのは私じゃない…物語は変えちゃいけない…いけなのに……)
脳裏に浮かぶあの日のバトルが消えず、あの瞬間物語のことや、自分がどうあるかなんて、全部吹き飛んでしまった。ただ勝ちたい、ダンデに勝ちたい。
あの真っ直ぐ自分を見つめてくれる、黄金の、太陽の瞳----。
「(バトルオーナーになるまで…その時になったら、また強くなってるんだろうなぁ…)バトル、したいなぁ」
ガチャと、扉が開く音が聞こえた。
ダンデだろうかと、は顔を上げると、ダンデではなかった。黒い帽子を深くかぶって顔は見えなかったが、ダンデでないことは確かだった。背は高く、高級そうな黒のコート、綺麗な黒い革靴が月光に当たって、それが綺麗に磨かれていることがわかった。
(私も戻らないと)
少し苦手な格好の人物の登場に、は一歩足を進めた時、バルコニーにやってきた人物が扉を閉めて、立ちはだかるように立っていた。
「やっと二人きりですネ、」
体が突然、言う事を聞けないのか、動きが止まってしまった。喉なんて乾いていなかったのに、今はカラカラと乾いたように、喉が絞られるように声が詰まった。
「え……な、なん、で…」
困惑しているの様子を、帽子を深くかぶった人物は笑みを深めた。
「なんで?決まってるじゃないですカ、」
帽子に手をかけると、帽子に納めていた髪が全て出た。金髪の髪色に特徴的なもみあげが二つ、冷たいエメラルド色の瞳が自分を捉えて、体がガタガタと震え始めた。
「迎えに来ましタ。帰りましょう、ワタクシ達のホームへ」
「…い、いや…」
は後ずさった。
「や、だ…やだ!帰らない!帰りたくないっ!」
悪夢だ。これは悪夢なんだ。悪い夢なら覚めて、今すぐ----。