第12章 踏み外したステップ
「----俺はそろそろ戻る。呼び出してすまなかった」
「いえ、ダンデさんと話せてよかったです…あの、ダンデさん」
少し硬い声色のに、ダンデは不思議そうにを見た。は緊張した面持ちだったが、スッと背筋を伸ばしてダンデを見ていた。
「私、ガラルに来てよかったです。旅をして、色んな人に会って、中には真剣に私のことを考えててくれてた人もいたり…」
「ちょっと強引な人もいましたけど」と、は悪戯っぽく笑ってダンデを見上げて言った。
「最後のバトルがダンデさんでよかった。だってあんなに楽しくてドキドキするバトルで負けてめっちゃ悔しいです!鍛え直さなきゃって思いましたもん!!」
闘志に燃えるを見たダンデは、目を大きく開けた。
「…カントーに戻るっていうのはつまり…」
「負けっぱなしっじゃカッコ悪いですしね!原点に戻ってやり直そうと思ってるんです!それで……いつか私が納得できたら…ダンデさんに再戦希望なんてしても…」
いいですか?と、聞く前に、ダンデはギュッとの両手を取って握りしめた。
「もちろんだ!!」
力加減はしているつもりだろうが、興奮と勢い余って握られた手が少しだけ痛いと感じた。自分の手をすっぽり覆ってしまう大きな手と、切望が混じったような優しい黄金の瞳に見つめられ、の心臓はキュウと、締まった。
「君が俺とのバトルを希望してくれるなら、俺はいつでも君を迎え撃つ!君が俺の愛するガラルに戻ってきてくれるなら俺は…何年でも君を待つ」
「!」
握っている手から小刻みな震えが伝わってきて、ダンデはハッと意識が現状に向いた。月明かりでは確認しずらかったが、びっくりした顔で自分を見るには見覚えがあった。
(しまった…彼女は突然手を握られると…!)
忘れもしない、ローズタワーでの一件の出来事。一瞬でダンデの頭の中をよぎり、パッと慌てて手を離した。
「ごめん、嬉しくてつい君の手を…」
しかし、驚くことになったのはダンデもだった。キラキラと月の光で輝く涙の雫が、の目からポタポタと溢れ出ていた。
(な、泣くほど嫌だったのか…!)
ダンデは血の気が引くのを感じた。