第12章 踏み外したステップ
「ダンデ君、少しお話があります」
あらかたスポンサーと話し終えて、あともう一息だというところでローズ委員長がどこからともなくやってきた。有無も言わせぬ笑顔でスポンサーに微笑むと、俺は一言スポンサーに謝罪の言葉を送ると、彼の後ろへ黙ってついていく。
「ご苦労様です。今年は去年より数は多くて少し疲れたんじゃありませんか?」
「いえ、これくらい----」
「そうですか?私には君が集中できていないんじゃないかと思っています----オリーヴ君」
「はい、委員長」
「カードとペンは持ってますか?」
「はい、こちらを」
ローズ委員長はオリーヴさんからメッセージカードとペンを受け取ると、俺の方へ向けた。
「これを君に渡します。どう使うかは君次第ですが…今晩くらい、君の時間もあってもいいんじゃないかと私は思うんです」
「委員長…」
「あとはマネージャー君とオリーヴ君に任せますから」
「…ありがとうございます」
失礼しますと、俺は一言ローズ委員長に言ってその場を立ち去った。
目立たないように、会場の裏から俺は出た。もらったメッセージカードを壁に押し付けて、文字を書いていく。それをドラパルトのドラメシアを一匹を借りて、カードを渡した。
「これをに渡してくれ。2階のバルコニー俺はいる」
俺のお遣いを文句なしにドラメシアは引き受けてくれた。「頼むぞ」というと、ドラメシアは会場の中へ飛んでいった。
バルコニーへは、情けないがリザードンに頼んで連れていってもらった。何回か来たことがあるおかげか、リザードンは俺の行きたいところへ連れていってくれた。
は来てくれるだろうか----賑やかな会場とは違い、バルコニーは物静かで、小さな風が心地いいと感じた。見上げた月が綺麗で、思わず観入っていると、嬉しそうな声を漏らしたドラメシアが俺に目の前にやってきた。
ガチャリと、ドアが開く音が聞こえた。
「---ダンデさん」
「やぁ----すまない、急に呼び出して」
あれだけモヤモヤしていた心が、月明かりに照らされていたせいなのか、今は澄んだ湖のように穏やかだった。