第12章 踏み外したステップ
やっぱり彼女とのバトルは激戦で、ポケモンたちにはいつもより休みを多く取ってもらった。中には悔しくてしょんぼりしているポケモンもいて、次は勝とうと力強く励ましたりしていた。
「ダンデ君、今年のスーツ届いてるからサイズだけ確認ね。不備があったら教えて」
「わかりました」
毎年恒例のオーダーメイドのスーツと、打ち上げの日程表をマネージャーから受け取った。
そこへローズ委員長とオリーヴさんが揃ってやってくると、俺の隣にいたマージャーがピシッと背筋を伸ばした。
「やぁ、ダンデ君。スーツは受け取ったようだね」
「はい、この通り」
「期待してますよ、ダンデ君の今年のスピーチ----あ、君。マネージャー君、少し話したいことがあるので、一緒に来てもらってもいいかな?」
「は、はい!もちろんです委員長!」
ローズさんたちに連れられていったマネージャーたちの背中を見送って、袋に包まれたスーツに視線を落とした。
・・・・・
そして打ち上げ当日、俺とローズ委員長は時間になるまで別室でスピーチの打ち合わせ等を確認した。参加するスポンサー、ジムリーダー達、そしての名前の載った名簿に目を通しながら、段取りを確認する。
運が良ければ、と話せるかもしれない。
などと、この時の俺はまだ浮かれていた。試合に勝ち、俺とのバトルを楽しんでくれたの笑顔、どんなドレスコードでしてくるのだろう、もっと話したい、あの夜のバトルの時のように、ずっとこの幸福が終わらないで欲しい----そう思っていた。
「ありがとう、みんな」
薄暗い会場に、ただ唯一当たるスポットライトの中で、俺のスピーチは始まった。会場のあちこちに顔を向けながら、俺は探していた。わからないけど、この大勢の中から、君を見つけたかった。
「今年は一味違った年だった。俺自身この間のチャンピオンカップで痛感させられた。胡座をかいていたつもりはない、だが俺はもっと強くなれると分かった。だからあえて言わせてもらいたい」
ようやく見つけた彼女は、ジムリーダー達といた。俺のスピーチを聞いてくれている、そう思っただけでスピーチに熱が入ってしまう。
「来年の俺はもっと強い。そのつもりで来年も挑んでほしい」
それが君であればいいのに…。