第12章 踏み外したステップ
【ダンデ視点】
『----リザードン、戦闘不能!よってこの勝負…ダンデの勝利っ!!!』
レフリーの判定を聞いて、俺の体は今までにないくらい喜びに震えたのは、いつ以来だっただろうか。俺が倒した前チャンピオンの時なのか、初めてヒトカゲと出会った時だっただろうか、それとも弟、ホップが生まれた時だっただったろうか。
久しく震えていなかった心が、激しく動いたのを確かに感じた。
勝った。俺より強いのではないかと密かに噂にされていた彼女に。
俺は勝ったんだ!
「リザードン!!!」
勝ったと分かった瞬間、俺の体はリザードンに向かって全速で走り抜けていた。嬉しさのあまり、振り返ったリザードンに飛びついて抱きしめると、リザードンは少しよろめきながらも、俺をしっかりと抱き止めてくれた。
「よくやった!!さすが俺のリザードンだッ!」
「バギュア!」
リザードンも満足のいくバトルだったのか、表情を見ればすぐに分かった。きっと俺とリザードンは、この時同じ気持ちだったに違いない。
「、俺とのバトルは…楽しめたかな?」
自信がなかったわけじゃないが、それでも俺は確認したかった。俺はちゃんと君の願いを叶えられたのかを。その問いに、今まで見た事がない彼女の笑顔に----。
「はい!とっても!」
また心臓が震えたような気がした。
興奮冷めやらぬまま、更衣室に戻った俺は、ベンチに腰掛けた。まだバトルの余韻が抜けないのか、勝った高揚感なのか、彼女の見せた笑顔なのか、心臓が、体が震えて止まらない。
あぁ、あぁ、足りない。
まだ満たされない。
終わったばかりだというのに、とのバトルが鮮明に頭に浮かんでくる。今夜限りじゃなく、また彼女とバトルできたら、どんなに最高な事だろう----。
今まで感じた事のない幸福感に、俺は溺れそうな気がした。