第12章 踏み外したステップ
ドラメシアは会場の入り口から廊下に出て、階段のある方へ向かった。階段を登り、また廊下を歩いた。廊下にはランプに灯はあるものの、使われる予定がなかったのか、人は誰も歩いていない。
少し歩いた先に、大きな二枚扉の前でドラメシアは止まった。
「ここ?」
扉の先を指すと、ドラメシアはコクコクと頷いた。の手を離すと、ドアをすり抜けて行ってしまった。
(ダンデさんで合ってるよね…むしろ私で合ってるのか…!?)
何とでもなれ!と、は思いながら片方の扉のノブを回した。外は思ったよりも月明かりがあり、扉の先はバルコニーだとわかった。
そして、そのバルコニーの奥で誰かが立っているのが見えた。月に照らされた長い髪に、見慣れたロゴがいっぱいのマントの人物が、帰ってきたドラメシアと戯れていた。
「---ダンデさん」
がバルコニーにいたダンデに声をかけると、ダンデは「やぁ」と言ってはにかんだ。ドラメシアはフワリと、バルコニーから一見できる庭園に飛んでいてしまった。
「すまない、急に呼び出して」
は扉を閉じてバルコニーの先にいるダンデの元まで歩いた。ダンデは少しだけ申し訳なさそうな顔をしていた。
「こうでもしないと君と話せない気がして」
ダンデとはあのチャンピオンカップ以来、なんの連絡も取っていなかった。の場合は、連絡を取る暇もなかったのだが。
「私と…?そういえば会場でスポンサーさんに群がられてましたもんね」
は苦笑い気味にその時の光景を思い出していた。今年もチャンピオンの座に輝いたダンデは、古参のスポンサーに加え、新しいスポンサーも増えて大変なんだろうなと、は思った。
「よく抜け出せましたね」
「コツがあるんだ」
「あ、悪いダンデさんだ」
「俺にだって息抜きは必要だぜ」
「…フフッ、そう言うことにしておきます」
あれ?と、は不思議に思った。
「その息抜きに、私って必要ですか…?」
「君と話がしたかったんだ、こうして、二人で」
月明かりを横から受け止めて微笑んだダンデは、まるで月にも愛されているように綺麗だった。