第12章 踏み外したステップ
「じゃ、俺さまスポンサー達と大事な話があるからまたな。あ、それとあんま一人になるなよ」
と、釘を刺されながらも、キバナは立ち去ってしまった。写真も消さずに…。
(一人になるなよって…今、一人なんだけど…それより写真消してもらうように今度言わないと!もっと可愛く撮ってほしかったな…ソーナンス顔って……今度って、いつになるかわからないけど…)
もしかしたら今晩がみんなとの最後の夜になるかもしれないと、は思っていた。この打ち上げのパーティが終われば、がガラル地方にいる理由がないからだ。
周りを見渡せば、ジムリーダー達がスポンサーと思われる人々と談笑しながら、何か話し合っていた。ポツン、と一人だけ蚊帳の外に掘り出されたような気分だった。
・・・・・
何人かのスポンサーの人に声をかけられたが、は懇切丁寧にお断りした。何人かは諦めず、会社の名刺だけ渡された。
(ルリナはまだ時間かかりそうだな…みんな忙しそうだし、私もネズさんみたいに帰っちゃおうかな)
会場の端に背をついて、小さなポーチからスマホを取り出した。
(スマホでメッセージを送る?うーん隙を見てルリナに一言言うべきか…うむむ)
どうしようかと悩んでいると、スルリと足元が何かをすり抜けた。
「わ!」
なんだろうと下を見てみると、一匹のドラメシアがこちらを見上げていた。目が合うと、ドラメシアは浮上し、目に高さまで上がってきた。
「あれ…君、どっかで会った?このお城に住んでるのかな?」
一度どこかで会ったような気がして、は首を傾げて尋ねた。すると、ドラメシアは手の平に収まるくらいのカードを持っていることに気が付いた。
「私に?」
そう尋ねると、ドラメシアは差し出した手の上にカードを置いた。
『少しだけ話せないか?裏のバルコニーで待ってる Dより』
カードには短く、そして名前のイニシャルが書いてあった。
(…D…このドラメシアのトレーナーって…)
視線をドラメシアに向けると、ついて来て欲しいのか、の手を引いてどこかへ連れて行こうと引っ張った。まだ行くとも言っていないのに、ドラメシアは嬉しそうにニパッと笑った笑顔を見て、はフニャリと笑ってしまった。
(可愛すぎる…!)