第12章 踏み外したステップ
(ど、どうしよう…空気を重くしてしまった…)
何故か自分とネズの周りだけ、空気がどんよりしているような気がした。チラリとネズを盗み見ると、ネズは少しだけ難しい顔をしていた。それでも深く聞いてこないことの方が、にはありがたかった。
「(とにかく話を変えなきゃ!)ネズさ----」
「なんでお前らそんな辛気臭さい顔してるんだ?特にネズ、そんなんだから哀愁のネズって言われるんだぜ」
顔を上げようとしていた時、ポンと、頭に大きな手が乗せられて、は「え?」と困惑した。
「…はぁ、うるさいのが来やがりましたよ」
「葬式みたいな雰囲気でいるから盛り上げに来てやったんだろ。感謝くらいして欲しいぜ…は感謝してるよな?」
自分の左側に立っている人物に顔を向けると、優しいシアンの色の瞳と目が合った。
「ひゃい♡してますキバナ様っ///!」
「ほらな、コイツも俺さまに感謝してるってよ」
「勝手に言ってろ…」
「はぁ」と、ネズは目に手を当てると、今日一番の大きなため息をついた。
「俺はスポンサーと会ってさっさと帰るんで、失礼します」
「え?!ちょ、ネズさん!?(二人きりにしないでぇえええ!!!)」
ネズはに服を掴まれる前に、人混みの中に紛れ込んでしまった。奇抜な髪ゆえ、どこにいるかはわかるが、の足はそれ以上ネズを追いかける事はしなかった。
(ネズさんの人でなし!)
「前から思ってたんだが、お前らって仲いいよな」
「へ!?そ、そうですか…?」
不思議そうな視線をに向けるキバナに、はドギマギしながらも、去っていくネズの背中を見据えた。
「少なくとも、俺さまよりかはいいんじゃねぇの?」
「そう…かな…鬱陶しがられてばっかりですよ…それにネズさんすっごいシスコンですし。あ、ネズさんの妹、マリィちゃんって言うんですけど、もうめちゃくちゃ可愛いくて天使!!はぁ〜また会って抱きしめたいです!」
「お、おぅ…(鬱陶しいっていうより、危険視されてんのか…?)」
マリィを思い出したは、強張っていた顔が解け、ふにゃりと顔が緩んだ。