第12章 踏み外したステップ
「…カブさん」
「随分怖い顔をしていたから心配したよ」
「…大丈夫だぜ、カブさん。それよりメロンさんから逃げてきたんでしょ?」
「ああ、うん…」と、ネズは苦い顔で笑った。
「流石に僕も若くないからね。お酒はほどほどにしないと----それで、キバナ君が考え事をしていたのは先ほどのスピーチのせい、違うかい?」
確信を突かれ、キバナはカブを見下ろした。
「僕もね、なんだか落ち着かないんだ…僕よりダンデのライバルである君の方が何倍もそれが大きいと思うんだけど…」
「違ったかな?」と、カブはキバナに尋ねると、キバナは「違わねぇぜ」と呟いた。
「ああああああネズさんネズさん!キバナ様とカブさんが何か話し合ってるうううう///!!!あ、今キバナ様が微笑んだ!いやああああ本当に今日命日かもしれないっ♡///!!!(小声)」
「俺の服を引っ張るのはやめてくれねぇですか、伸びます」
「あ、ごめんなさい」
パッとはネズのスーツを離した。
「そんなにアイツがいいなら、行けばいいじゃないですか。俺に構ってても何もならないでしょう」
「おっしゃる通り…なんですけど…スーツの破壊力が凄すぎて…む、無駄に緊張しちゃって…///」
「…あいつのどこがいいのか俺にはさっぱりわかりません」
「いいところありまくりですよっ!!!」
「顔ですか?」
「顔もですけど!?すっごいドストライクですけど!!」
(強調しやがった…!)
「負け続けても、絶対に勝つまで努力をやめない人です!どんなことがあっても逃げないって、私からしたらすごい事なんです!!私はっ----」
ハッとは口に手を当て、その先の言葉を塞いだ。ネズもの必死の剣幕に目がいつもより大きく開けて見ていたが、はみるみと花が萎んでいくように、顔に影が差した。
「私は…臆病者だから…」
「…それは、」
ネズはチャンピオンカップ前日に起こった、何かに耐えるように震えて怯えているの姿を思い出した。すると、言葉はそれ以上出なくなり、なんと声をかけばいいのかわからなくなった。
はキバナの顔だけが好きだけではなかった、ただそれだけは理解した。