第12章 踏み外したステップ
ダンデのスピーチが終わると、ピリついていたジムリーダーたちも落ち着き始めた。「ご…ご飯でも食べます?」と、少し居心地悪そうにしていたがそう言うと、「そうね!」と、ルリナが微笑んでくれた。
「ダンデの奴、煽りやがって」
ローストビーフにフォークを乱暴に突き刺したキバナは、一口でそれを口の中に収めてしまう。
(あ、ちょっと今のワイルドっぽくていい…///)
ダンデのことになると年相応に熱くなるキバナに、少し離れたところにいるはポッと頬を赤らめた。
「そりゃそうじゃ。この間のバトルでダンデ君もかなり追い詰められとったとからな。色々発見があったに違いない」
追加のサラダを自分のお皿に盛りながら、ヤローはのほほんとこたえた。
「君もその一人なんじゃないですか、キバナ君?」
ニコッとヤローはキバナに微笑んだ。
(ヤローの笑顔って本当に癒しだ…ルリナが惚れるのもわかる)
丸い小さなクラッカーの上に乗ったチーズと薄く切られたハムを手に取ると、は口の中に入れた。
「あ、ネズさんネズさん、このチーズ、オレンジピュールみたいなものが混じってて美味しいですよ!」
「おい、俺の皿に勝手に入れないでください」
「まぁまぁまぁ」
「…」
お皿に二つも乗せられたネズは、ジトリとを睨みつけるが、は美味しそうにふたつ目を食べた。ネズの睨みつけるは、もうには効いていないようだった。
「……」
ネズの無言の睨みつけも跳ね除け、次は何を食べようかと目を輝かせているの横顔を、キバナは静かに見つめた。
あの暑い、熱いスタジアムで燃え上がる赤と青の炎の中で、心の底からバトルを楽しんでいたとダンデ。もうそこには誰も入ることを許されないような、そんな雰囲気があった。
一時も目が離せない壮絶なバトルだった。お互いの全てを出し切ったあのバトルは、後々語り継がれるに違いない----。
(シーズンが終わったっていうのに、なんか落ち着かねぇ)
「キバナ君、大丈夫かい?」
ハッとキバナは顔をあげると、心配の眼差しで見上げてくるカブがいた。