第12章 踏み外したステップ
「…え、私?」
鏡に映った自分の姿に、私はガン見している。上から下まできっちりと整えられた私が、私じゃないようでソワソワしてしまう。
(普段ナチュラルメイクしかしてないからなぁ…メイクの力ってすごい)
バウタウンに着いてランチをしっかり楽しんだ後、ルリナに言われた通りの約束の時間にバウジムに訪れた。ジムには行かず、ルリナのモデル事務所に連れて行かれると、そこからは大変だった。
ドレスに着替えさせられたら、髪の毛をセット、その次はメイク。隣で同じくセットをしているルリナはやっぱりモデルだから慣れているけど、普段色んな人とこんなに接する機会が少ないというか、緊張してあんまりお話しできなかった…。
スタイリストの方々も美男美女揃いで目を潤わせていただいた。
ドレスはルリナとメロンさんが選んでくれたおかげで、ドレスとかに疎い私が買わないようなデザインでもそれなりに着こなせている…気がする。トップは濃い紺色で、レースや刺繍がシンプルにある。レースの袖も短めだけど、背中はほぼレースで覆われていてちょっとスースーする…。
Aラインのワンピースデザインだから、胸と腰辺りから膝下まで、少し薄めの紺色の長いスカートが動くたびにフワフワ揺れる。
靴もドレスに合わした紺色で、ローヒールにしてある。生憎ハイヒールを1日で履きこなせる自信はない。折るか足を挫くかだ。
(あと数時間でキバナ様のスーツ姿を拝める…あわよくば写真撮れたらいいな…心してかからねば)
私は決意を胸に、ナックルシティの古城へ乗り込んだ。