第11章 【第二幕】置いてきた過去に追い付かれて
突然のことには頭が真っ白になった。呆然とスマホを見ていると、キバナが痺れを切らした。
「何かあった時だ、ほら、今日みたいな事があったらすぐ助けられるだろ」
「た、確かに!」
は慌てて自分のスマホを取り出した。震えそうになる手をなんとか抑えて、慎重に番号を押していく。そしてワンコール、キバナのスマホに電話をかけた。
(き、キキキキキキバナ様のナンバーゲットしちゃったとか、え、これは夢?今日一日長い夢を見てたの???)
は自分のほっぺを思いっきりつねった。
「イダダダダダダ夢じゃな”い”!!」
「何やってんだ」
呆れた顔でキバナはを見下ろしていた。
「ゆ、夢を見てるのかと思って…」
ジンジン痛む頬をさすりながら、は苦笑いをこぼした。
「それじゃ、私行きますね。キバナ様も帰り道、気を付けてください」
「ああ、また明日な」
はホテルの入り口に入ると、もう一度振り返って後ろを確認した。そこにはまだキバナが立っていて、は小さく手を振ると、キバナも振り返してくれた。
(///!?)
まさか返してくれるとは思ってもおらず、は足早に部屋に向かった。
(この番号拝みながらご飯5杯はいける!!!)
の姿が完全に消えると、キバナは微笑んでいた顔をやめた。辺りを警戒するように目を配らせたが、至って変わったところはない。
(…消えたか。それより俺かあいつ、どっちだ…)
警戒を緩まないまま、キバナはナックルジムの方へ歩いていった。
(あいつも今年の準優勝者だからな…変な奴に目をつけられてないといいが…)
すでに見られている気配はなく、めんどくさいことにならないといいなとキバナは思った。