第10章 チャンピオンカップ
【視点】
やっとキョダイマックスの時間切れまで持ち込んだのに、ダンデのリザードンは中々手強い。私のリザードンは今もソーラービームを上手くかわして飛んではいるけれど、一度地面に降り立った時、あの子がかなり疲れていることがわかった。
キョダイマックスの技を、自身の技をぶつけて潜り抜けて来た代償は大きかった。でもそんなことで私のリザードンは倒れない。むしろ彼女は喜んでいる。やっと出会えた強い相手とのバトルを、あっさり終わらせたくない気持ちは、トレーナーの私に似てしまったのかもしれない。
こんなにギリギリに追い詰められいるのに、私の心臓は馬鹿みたいに高鳴っている。きっと、こんな気持ちなんてもう思い出せないって諦めてた。
でも、そんなことなかった。
このガラル地方に来て、色んな人、色んなポケモンに出会って、旅も楽しくって、たまには落ち込んだ日もあったけど、この数年で一番色付いた時だった。
なんのために、どうしてトレーナーになったのか----この世界に転生して、初めてポケモンに触れた時、大切にしたいって思った。バトルをした時、傷付いて痛い思いをしているポケモンを見て、怖いと思った。
それでもこの道を選んだのは、リザードンが、あの子がヒトカゲの時、その小さな体で一生懸命に私を守ろうとしてくれたのを見て、私も強くなろうって決心したんだ。
ダンデに負かしてほしいって言ったことは嘘じゃない。区切りをつけたいって思ってた。もう求められるのに疲れて、終わらせてほしいと願った----それなのに、このガラル一強いトレーナーを倒してみたい---今更我儘な私がいる。
(どうしてキバナ様がダンデにこだわるのか、なんかわかったかも)
こんなにバトルに強くて、真っ直ぐで、本当にバトルをするのが好きで、こっちまで楽しい気持ちにさせる、素敵な人だ。
(この楽しいバトルが、ずっと終わらなかったらいいのに…)
もうこの楽しい気持ちを、絶対に忘れたくない。忘れさせてほしくない!
(ダンデもそう思ってたらいいな…)
だって、こんな楽しいバトル、忘れられるわけない!