第10章 チャンピオンカップ
「気を付けるんだ、オノノクス!」
逆鱗できっと声も届いていないが、ハッサムの目から消えない闘志、そしてこのバトルをどこか楽しんでいる様子に、油断はできないとダンデは思った。
ハッサムはこちらへ突進してくるオノノクスに集中した。手をクロスさせ、静かにその時を待っていた。
「シザークロス!!!」
の合図とともに、ハッサムは最後の力を振り絞ってオノノクスへシザークロスを決めた。
ハッサムを通り越えたオノノクスは、のし、のし、と前へゆっくり進むと、フラリとその大きな巨体がゆっくりと倒れた。
『----オノノクス、戦闘不能!!!!』
二匹のバトルを見守っていた観客たちが、一気に熱狂の声をあげた。
「ハッサム!」
はまだ自分に背を向けているハッサムに声をかけた。
「--もう、終わったよ…かっこよかったよ」
「…」
ハッサムは顔だけをに向けると、フッと表情を緩めた。ガクン、と膝から力が抜け、ガシャン、と音を立ててフィールドに倒れ込んだ。
『--ハッサム、戦闘不能!!』
スタジアムが観客の声で埋まる中、ハッサムはどこか穏やかな表情で目を閉じていた。とダンデは、お互いのポケモンをモンスターボールに戻した。
(いっぱい休んでね、ハッサム…)
(無理させたな、オノノクス----あの時、俺の見間違いじゃなければあの土壇場で急所に当てた…俺のポケモンを二体も倒すなんてな)
ダンデの残りのモンスターボールは二つ、対しては三つ。ダンデは息を大きく吸って吐いた。
「出番だ、ドラパルト!」
気合いを入れ直したダンデは、ドラパルトの入ったモンスターボールを投げた。ボールから出てきたドラパルトは、ようやく自分の出番だとわかると、やる気に満ちた目でダンデを見下ろした。